150 / 761
side 野々村美咲
8
しおりを挟む
「なに言ってるの!
野々村さん…十年前の事を思い出して御覧なさい。
あぁ、あの時は若かった…って思うでしょう?
今から十年経った後、今のことを思い出したらあなたはやっぱり同じように思うはずよ。
なのに、今のあなたは今の自分のことをおばさんだなんて言ってる…
おかしいと思わない?
それにね、おばさんだからお化粧しないなんて、そんなのおかしいわよ。
どんな人をも綺麗にしてくれる魔法を使わないなんて、すごくもったいないことよ。
お姉ちゃんだって、おばさんだって、おじさんだって、可愛いとか綺麗だとか言われたら嬉しくなるもんでしょう?
第一、おしゃれってとても楽しいものよ。
魔法がうまくいくと周りの人の態度も変わるし、魔女にでもなったつもりで日々魔法の練習を積み重ねて、あなたの周りでたくさんの奇蹟が起こさなきゃ!」
タカミーさんはテレビで見るよりもさらに饒舌で…お話を聞いていると思わず前向きな気持ちになって来る。
なのに、その間、少しも手が止まることはなく、私の伸ばしっぱなしの髪にどんどんはさみが入る。
さすがにカリスマ美容師と言われる方だ。
「野々村さん、結婚は?」
「ま、まだです。
もう一生もらい手はないと思います。」
「またそんなこと言う~
……それで、好きな人はいるの?」
「え……?ま、ま、まさか!」
「ふ~ん、いるのね。
じゃあ、私が特別の魔法をかけてあげる!
野々村さんが、好きな人と絶対にうまくいくようにね!」
簡単に見破られてしまった。
でも、私の好きな人は、手の届くような人じゃない。
タカミーさんの魔法がどれほどすごい威力を発揮しても、絶対に無理…そんなことはわかってる。
だけど……タカミーさんに自信満々な顔でそんなことを言われたら、確かに気持ちが高揚して来て……
うまくいくなんてそんなたいそうなことは無理でも…もしかしたら、青木さんに少しくらいは誉めてもらえるかもしれない。
変わったって気付いてもらえるだけでも嬉しい。
それは、たとえ、その時だけだとしても私に関心を持っていたたけたってことだもの。
その髪型似合ってるなんて言われたら…考えるだけで、思わず顔がにやけてしまい、私はそれを隠すのに必死だった。
野々村さん…十年前の事を思い出して御覧なさい。
あぁ、あの時は若かった…って思うでしょう?
今から十年経った後、今のことを思い出したらあなたはやっぱり同じように思うはずよ。
なのに、今のあなたは今の自分のことをおばさんだなんて言ってる…
おかしいと思わない?
それにね、おばさんだからお化粧しないなんて、そんなのおかしいわよ。
どんな人をも綺麗にしてくれる魔法を使わないなんて、すごくもったいないことよ。
お姉ちゃんだって、おばさんだって、おじさんだって、可愛いとか綺麗だとか言われたら嬉しくなるもんでしょう?
第一、おしゃれってとても楽しいものよ。
魔法がうまくいくと周りの人の態度も変わるし、魔女にでもなったつもりで日々魔法の練習を積み重ねて、あなたの周りでたくさんの奇蹟が起こさなきゃ!」
タカミーさんはテレビで見るよりもさらに饒舌で…お話を聞いていると思わず前向きな気持ちになって来る。
なのに、その間、少しも手が止まることはなく、私の伸ばしっぱなしの髪にどんどんはさみが入る。
さすがにカリスマ美容師と言われる方だ。
「野々村さん、結婚は?」
「ま、まだです。
もう一生もらい手はないと思います。」
「またそんなこと言う~
……それで、好きな人はいるの?」
「え……?ま、ま、まさか!」
「ふ~ん、いるのね。
じゃあ、私が特別の魔法をかけてあげる!
野々村さんが、好きな人と絶対にうまくいくようにね!」
簡単に見破られてしまった。
でも、私の好きな人は、手の届くような人じゃない。
タカミーさんの魔法がどれほどすごい威力を発揮しても、絶対に無理…そんなことはわかってる。
だけど……タカミーさんに自信満々な顔でそんなことを言われたら、確かに気持ちが高揚して来て……
うまくいくなんてそんなたいそうなことは無理でも…もしかしたら、青木さんに少しくらいは誉めてもらえるかもしれない。
変わったって気付いてもらえるだけでも嬉しい。
それは、たとえ、その時だけだとしても私に関心を持っていたたけたってことだもの。
その髪型似合ってるなんて言われたら…考えるだけで、思わず顔がにやけてしまい、私はそれを隠すのに必死だった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
伏線回収の夏
影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷で不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のX。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。
《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
捨てた騎士と拾った魔術師
吉野屋
恋愛
貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。


果たされなかった約束
家紋武範
恋愛
子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。
しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。
このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。
怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。
※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。

王命って何ですか?
まるまる⭐️
恋愛
その日、貴族裁判所前には多くの貴族達が傍聴券を求め、所狭しと行列を作っていた。
貴族達にとって注目すべき裁判が開かれるからだ。
現国王の妹王女の嫁ぎ先である建国以来の名門侯爵家が、新興貴族である伯爵家から訴えを起こされたこの裁判。
人々の関心を集めないはずがない。
裁判の冒頭、証言台に立った伯爵家長女は涙ながらに訴えた。
「私には婚約者がいました…。
彼を愛していました。でも、私とその方の婚約は破棄され、私は意に沿わぬ男性の元へと嫁ぎ、侯爵夫人となったのです。
そう…。誰も覆す事の出来ない王命と言う理不尽な制度によって…。
ですが、理不尽な制度には理不尽な扱いが待っていました…」
裁判開始早々、王命を理不尽だと公衆の面前で公言した彼女。裁判での証言でなければ不敬罪に問われても可笑しくはない発言だ。
だが、彼女はそんな事は全て承知の上であえてこの言葉を発した。
彼女はこれより少し前、嫁ぎ先の侯爵家から彼女の有責で離縁されている。原因は彼女の不貞行為だ。彼女はそれを否定し、この裁判に於いて自身の無実を証明しようとしているのだ。
次々に積み重ねられていく証言に次第に追い込まれていく侯爵家。明らかになっていく真実を傍聴席の貴族達は息を飲んで見守る。
裁判の最後、彼女は傍聴席に向かって訴えかけた。
「王命って何ですか?」と。
✳︎不定期更新、設定ゆるゆるです。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる