赤い流れ星3

ルカ(聖夜月ルカ)

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side 野々村美咲

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(あんなに感情的になられた青木さんを見たのは、初めてじゃなかったかしら…)



いつもは冷静な青木さんが、声を荒げられたのを見て、私は見がすくむ想いだった。
あの時は、きっとマイケルさんが機転を利かせて温泉に誘って下さったんだと想う。
あのまま、怒って帰られたりしてたら、その場の雰囲気だけじゃなく、KEN-Gさんとの関係もぎくしゃくしたものになっただろう。
ご近所でそれはやっぱりまずい。
それにしても、一緒に食事に行かれなかったのは、本当にお仕事だったのかしら?
なんともないふりをされてただけじゃ……なんて、いくらなんでも考え過ぎよね?
 青木さんだけじゃなく、マイケルさんも帰られたんだもの。



あぁ、どうしよう…
やっぱり、蒸し返さない方が良いのかな?
 一言だけ簡単に謝って、話題を変えたら大丈夫かしら?
……美幸さんに相談した方が良いかな…



あんなことがあったから、ちょっと複雑な心境ではあるけれど…
だけど、今日は良いこともあった。
それは、KEN-Gさんのこと。
 KEN-Gさんがスマートフォンのお話をされていた時、私は重大な事に気が付いた。

 契約には身分証明がいるということに…



以前、青木さんに少し聞いたことがある。
 会社を立ち上げようと考えられた第一の理由は、本当はシュウさんのためだったってこと。
シュウさんは小説の世界からやって来られた…つまり、本来ならこの世界には実在するはずのない人だから、当然ながら戸籍がない。
だから、一生、就職出来ないだろうと考えられた青木さんが、シュウさんに仕事を与えるため、ご自分で会社を立ち上げようと考えられたのだと…
賢者さんもシュウさんと同じく小説の中の人物だから、KEN-Gさんがあの賢者さんだとしたら、この世界での戸籍を持ってらっしゃるわけがない…
そりゃあ、世の中にはお金さえ出せば、危険なルートからそういうものを手に入れることも出来るらしいけど、KEN-Gさんはビル等の名義ももってらっしゃるわけだし、携帯の身分証明とは違ってそういう不動産の契約にあやしい戸籍は使えないんじゃないかしら?
だから、やっぱり、あの賢者さんとKEN-Gさんは無関係なんだって、今日やっと納得出来た。
まだ、すべてがクリアになったわけではないけれど、ずっともやもやしてた心の霧がほんの少し晴れたのは事実だ。
それは大きな収穫だったと思ってる…
それにしても、なんで、こんな簡単なことに今まで気付かなかったのかと、我ながら呆れてしまう。
とにかく、これからは賢者さんとKEN-Gさんは切り離して、KEN-Gさんと美幸さんとの関係を探らなきゃ…!

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