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side 和彦
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「す、すまん。
事情も知らず、つまらんことを言うてしもうた。
いや、野々村さんはいつもえらく地味にしておるじゃろ?
じゃから、ちょっとはっぱをかけるつもりで言うただけなんじゃ。
本当は似合ってると思うとったぞ。
上品で良い石でセンス抜群じゃ!」
あせって必死に言い繕う大河内さん…
不安げな表情で俺をみつめる野々村さんと美幸…
(……あぁ、なんで……)
「そうだね!
KEN-Gの気持ちはよくわかるよ。
野々村さんがいつもはつけないアクセサリーを付けてたから、これを機会にもっとおしゃれをして綺麗になってほしかったんだよね?!」
「そ、そうなんじゃ。
断じてその石が良くないってことじゃあないぞ!」
アッシュのフォローで、俺はますます気が重くなった。
皆にこんなに気を遣わせて……最低だ…
「あ…あの……」
「KEN-G!
温泉に入れてもらって良いかな?」
野々村さんが何かを言いかけた時、マイケルが突然大きな声を出した。
「え…?あぁ、もちろんかまわんよ。」
「カズ…使わせてもらおうよ。
このところ、忙しかったから身体がカチカチなんだよ。
ここの温泉でほぐさせてもらおう!」
「あ……」
マイケルは俺の腕をしっかり掴み、そのまま温泉まで引っ張って行った。
*
「マイケル…すまなかったな…
気を遣わせて。」
「何のこと?
僕はただ温泉に入りたかっただけだよ。
やっぱり良いね…広いお風呂は。
あ、そうだ…これから毎日ここに浸かりに来ようかな。」
「マイケル……」
俺よりずっと年下なのに、マイケルはやっぱり頼りになる男だ。
「カズ…もしかして、最近、何か悩みでもあるの?」
「え?い、いや…そんなものはない。
ただ………」
「ただ?」
「……あ、あぁ…その…美幸のことが心配で…
あいつのことをどうしてやったら良いんだろうって、いつも考えてるから…それで、つい苛々してたのかもしれないな。」
咄嗟に口にしたその答えは、でまかせというわけではないと思う。
それは、事実だ。
だが……それだけではないような気もしていた。
このところ、どこか気持ちが不安定なのは自分でも気付いていた。
だけど、その原因がわからない。
亜理紗のことは綺麗さっぱり片付いた。
仕事も至って順調だ。
最近、変わったことといえば、美幸がこっちに来たことだけだから、やはり、そのことが原因としか思えない。
事情も知らず、つまらんことを言うてしもうた。
いや、野々村さんはいつもえらく地味にしておるじゃろ?
じゃから、ちょっとはっぱをかけるつもりで言うただけなんじゃ。
本当は似合ってると思うとったぞ。
上品で良い石でセンス抜群じゃ!」
あせって必死に言い繕う大河内さん…
不安げな表情で俺をみつめる野々村さんと美幸…
(……あぁ、なんで……)
「そうだね!
KEN-Gの気持ちはよくわかるよ。
野々村さんがいつもはつけないアクセサリーを付けてたから、これを機会にもっとおしゃれをして綺麗になってほしかったんだよね?!」
「そ、そうなんじゃ。
断じてその石が良くないってことじゃあないぞ!」
アッシュのフォローで、俺はますます気が重くなった。
皆にこんなに気を遣わせて……最低だ…
「あ…あの……」
「KEN-G!
温泉に入れてもらって良いかな?」
野々村さんが何かを言いかけた時、マイケルが突然大きな声を出した。
「え…?あぁ、もちろんかまわんよ。」
「カズ…使わせてもらおうよ。
このところ、忙しかったから身体がカチカチなんだよ。
ここの温泉でほぐさせてもらおう!」
「あ……」
マイケルは俺の腕をしっかり掴み、そのまま温泉まで引っ張って行った。
*
「マイケル…すまなかったな…
気を遣わせて。」
「何のこと?
僕はただ温泉に入りたかっただけだよ。
やっぱり良いね…広いお風呂は。
あ、そうだ…これから毎日ここに浸かりに来ようかな。」
「マイケル……」
俺よりずっと年下なのに、マイケルはやっぱり頼りになる男だ。
「カズ…もしかして、最近、何か悩みでもあるの?」
「え?い、いや…そんなものはない。
ただ………」
「ただ?」
「……あ、あぁ…その…美幸のことが心配で…
あいつのことをどうしてやったら良いんだろうって、いつも考えてるから…それで、つい苛々してたのかもしれないな。」
咄嗟に口にしたその答えは、でまかせというわけではないと思う。
それは、事実だ。
だが……それだけではないような気もしていた。
このところ、どこか気持ちが不安定なのは自分でも気付いていた。
だけど、その原因がわからない。
亜理紗のことは綺麗さっぱり片付いた。
仕事も至って順調だ。
最近、変わったことといえば、美幸がこっちに来たことだけだから、やはり、そのことが原因としか思えない。
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