71 / 761
side 野々村美咲
1
しおりを挟む
*
(何やってるんだろう、私……)
馬鹿みたい…
家に戻って来てから、私は青木さんの下さったネックレスをつけては、またはずし…
そして、また思い直してつけては、またはずすという行動を何度も繰り返していた。
ムーンストーンが好きだなんて私は一言も言ったことがないのに、青木さんがそのムーンストーンを下さった…
大袈裟に言えば、奇跡にも思えるような幸せで……見ているだけで胸が熱くなる。
だけど、それは私の恋愛運が良くなるようにって願いからで……つまり、私の青木さんへの想いを諦めさせるためなのかもしれない。
私に好きな人が出来たら、青木さんへの想いが断ち切れると思われたんじゃないかって思うと、それはとても辛い…
私は青木さんに何も期待していないのに…
そのことは、青木さんもわかって下さってると思うけど、もしかしたら、それでもいやだってこと?
私が想いを寄せていると考えるだけでも、いやな気分がするのかしら?
……でも、そこまでいやだったら、きっとこんなものも買っては下さらない筈。
いや……そうじゃなくて、そこまでいやだからこそ神頼みのようなものに走ったとか…?
さっきから私はこんなことばかり考えては、馬鹿みたいにネックレスを付けたりはずしたりしてる。
大好きな青木さんが下さった、大好きなムーンストーン…そう思うと、思わず顔がほころぶのだけど、そこに込められた意味を考えると辛くて泣けて来る。
だから、何度も何度もつけてははずし、つけてははずし…
(あぁ…どうすれば良いのかしら…)
まとまらない。
どうすれば良いのか、完全に混乱してわからなくなってる。
私はゆっくりと時間をかけて熱くて濃いお茶を飲んだ。
落ちつきたい時にはお茶…私の昔からの癖だ。
(そうだわ。こんなことよりも、早く青木さんにお礼のメールを送らなきゃ…)
お茶のおかげで少し落ちついたのか、今、何をすべきかということに私は気付いた。
とりあえず、ネックレスを箱に戻して、私は携帯の画面をみつめた。
『青木さん、先程、ムーンストーンのネックレスを受け取りました。
どうもありがとうございます。』
だけど、そこで私の指がぴたりと停まった。
これだけじゃ、あまりにも素っ気無い。
私も実際ものすごく嬉しい気持ちがあるのだから、素直にその気持ちを打てば良い。
そう考えて少し打っては、削除…
どうしても素直になれなくて、おかしなことを打ってしまったから。
そして、気を取り直してまた打ち直して……また削除する…
『青木さんのご迷惑にならないように、私もムーンストーンのパワーで早くいい人みつけないといけませんね』
恨みがましい、不快な文面だ。
こんなの送れない…
結局、長い時間悩んで、何度も打ち直した果てに私が送った内容は…
『素敵なネックレスをどうもありがとうございました。
大切にします。』
ただ、それだけの短い文章だった。
(何やってるんだろう、私……)
馬鹿みたい…
家に戻って来てから、私は青木さんの下さったネックレスをつけては、またはずし…
そして、また思い直してつけては、またはずすという行動を何度も繰り返していた。
ムーンストーンが好きだなんて私は一言も言ったことがないのに、青木さんがそのムーンストーンを下さった…
大袈裟に言えば、奇跡にも思えるような幸せで……見ているだけで胸が熱くなる。
だけど、それは私の恋愛運が良くなるようにって願いからで……つまり、私の青木さんへの想いを諦めさせるためなのかもしれない。
私に好きな人が出来たら、青木さんへの想いが断ち切れると思われたんじゃないかって思うと、それはとても辛い…
私は青木さんに何も期待していないのに…
そのことは、青木さんもわかって下さってると思うけど、もしかしたら、それでもいやだってこと?
私が想いを寄せていると考えるだけでも、いやな気分がするのかしら?
……でも、そこまでいやだったら、きっとこんなものも買っては下さらない筈。
いや……そうじゃなくて、そこまでいやだからこそ神頼みのようなものに走ったとか…?
さっきから私はこんなことばかり考えては、馬鹿みたいにネックレスを付けたりはずしたりしてる。
大好きな青木さんが下さった、大好きなムーンストーン…そう思うと、思わず顔がほころぶのだけど、そこに込められた意味を考えると辛くて泣けて来る。
だから、何度も何度もつけてははずし、つけてははずし…
(あぁ…どうすれば良いのかしら…)
まとまらない。
どうすれば良いのか、完全に混乱してわからなくなってる。
私はゆっくりと時間をかけて熱くて濃いお茶を飲んだ。
落ちつきたい時にはお茶…私の昔からの癖だ。
(そうだわ。こんなことよりも、早く青木さんにお礼のメールを送らなきゃ…)
お茶のおかげで少し落ちついたのか、今、何をすべきかということに私は気付いた。
とりあえず、ネックレスを箱に戻して、私は携帯の画面をみつめた。
『青木さん、先程、ムーンストーンのネックレスを受け取りました。
どうもありがとうございます。』
だけど、そこで私の指がぴたりと停まった。
これだけじゃ、あまりにも素っ気無い。
私も実際ものすごく嬉しい気持ちがあるのだから、素直にその気持ちを打てば良い。
そう考えて少し打っては、削除…
どうしても素直になれなくて、おかしなことを打ってしまったから。
そして、気を取り直してまた打ち直して……また削除する…
『青木さんのご迷惑にならないように、私もムーンストーンのパワーで早くいい人みつけないといけませんね』
恨みがましい、不快な文面だ。
こんなの送れない…
結局、長い時間悩んで、何度も打ち直した果てに私が送った内容は…
『素敵なネックレスをどうもありがとうございました。
大切にします。』
ただ、それだけの短い文章だった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
前世は冷酷皇帝、今世は幼女
まさキチ
ファンタジー
2、3日ごとに更新します!
コミカライズ連載中!
――ひれ伏せ、クズ共よ。
銀髪に青翡翠の瞳、人形のような愛らしい幼女の体で、ユリウス帝は目覚めた。数え切れぬほどの屍を積み上げ、冷酷皇帝として畏れられながら大陸の覇者となったユリウス。だが気が付けば、病弱な貴族令嬢に転生していたのだ。ユーリと名を変え外の世界に飛び出すと、なんとそこは自身が統治していた時代から数百年後の帝国であった。争いのない平和な日常がある一方、貧困や疫病、それらを利用する悪党共は絶えない。「臭いぞ。ゴミの臭いがプンプンする」皇帝の力と威厳をその身に宿す幼女が、帝国を汚す悪を打ち払う――!

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり
イミヅカ
ファンタジー
ここは、剣と魔法の異世界グリム。
……その大陸の真ん中らへんにある、荒野広がるだけの平和なスラガン地方。
近辺の大都市に新しい冒険者ギルド本部が出来たことで、辺境の町バッファロー冒険者ギルド支部は無名のままどんどん寂れていった。
そんな所に見習い冒険者のナガレという青年が足を踏み入れる。
無名なナガレと崖っぷちのギルド。おまけに巨悪の陰謀がスラガン地方を襲う。ナガレと仲間たちを待ち受けている物とは……?
チートスキルも最強ヒロインも女神の加護も何もナシ⁉︎ ハーレムなんて夢のまた夢、無双もできない弱小冒険者たちの成長ストーリー!
努力と友情で、逆境跳ね除け成り上がれ!
(この小説では数字が漢字表記になっています。縦読みで読んでいただけると幸いです!)

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
伏線回収の夏
影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷で不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のX。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。
《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる