赤い流れ星3

ルカ(聖夜月ルカ)

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side 野々村美咲

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(うわぁ…!)



通された食堂は、ヨーロッパの宮殿のような華美な造りの部屋で…
広さは……一体どのくらい?
もしかしたら百畳程はあるかもしれない。
食堂というよりは、パーティルームといった感じで、広過ぎて全然落ち着かない。



「あらためて…今日は来てくれてどうもありがとう。」

席に着くと、おじいさんがにこにこしながらそうおっしゃった。
大金持ちなのに、高ぶった所のない感じの良いおじいさんだけど…
美幸さんのことを見る目が、ちょっと尋常ではないように思えて、そのことだけが私は少し気がかりだった。



「こ、こちらこそ、お招きいただいてどうもありがとうございます。」

美幸さんは俯いたまま小さな声でそう言って…



「では、まずは乾杯じゃな。」

上品なデザインのグラスに食前酒が注がれ、私達はおずおずとグラスを合わせた。

シェフが運んで来た料理は、色鮮やかなフランス料理。
器もとてもセンスの良いもので、食べる前からその美しさに私は魅了された。



「もし、口にあわんようじゃったら、すぐに違うものを用意させるから、言っておくれ。
ひか…じゃない…美幸さん、これはうまいぞ。」

おじいさんは美幸さんに気を遣いながら、あれこれと話しかける。
そのせいか、美幸さんもだんだんリラックスして来たのか、不思議な程、打ち解けて話をするようになっていた。
その時、私はふとあることに気が付いた。



(そういえば、最初に会った時にもおじいさんは何か言い間違えて…
今も確か「ひか」って……)



私はそのことが妙に気になった。



(……ひか…ひか………!
まさか「ひかり」!?)



急に鼓動が速くなった。
美幸さんのペンネームであり、小説の中での名前。
でも、ここでは美幸さんがひかりさんだということを知ってる人は少ないはず。
もしも、このおじいさんがそのことを知ってるとしたら、それは一体なぜ…!?



「あ、おじいさん……まだ名前聞いてなかったね。」

「わしは大河内健三郎じゃ。」

「……なんだか迫力のある名前だね。
あ、でも、表札には確か……」

「大河内健三郎なんて堅苦しいじゃろ?
だから、皆には気軽に健爺と呼んでほしくてな。
それでKEN-Gなんじゃ。」

「そうなんだぁ…
それにしても、KEN-Gのおじいさんは、すごいお金持ちなんだね。」

「金がすべてだなんて思っとらんが、ないよりはあった方が良いからのう。」



二人の会話は、どこかおかしな会話だった。
どこがと言われると、すぐにはわからないのだけど……
でも、美幸さんはごく自然に話されている。


(……私は考えすぎているのかしら?)
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