22 / 761
side 野々村美咲
7
しおりを挟む
*
(うわぁ…!)
通された食堂は、ヨーロッパの宮殿のような華美な造りの部屋で…
広さは……一体どのくらい?
もしかしたら百畳程はあるかもしれない。
食堂というよりは、パーティルームといった感じで、広過ぎて全然落ち着かない。
「あらためて…今日は来てくれてどうもありがとう。」
席に着くと、おじいさんがにこにこしながらそうおっしゃった。
大金持ちなのに、高ぶった所のない感じの良いおじいさんだけど…
美幸さんのことを見る目が、ちょっと尋常ではないように思えて、そのことだけが私は少し気がかりだった。
「こ、こちらこそ、お招きいただいてどうもありがとうございます。」
美幸さんは俯いたまま小さな声でそう言って…
「では、まずは乾杯じゃな。」
上品なデザインのグラスに食前酒が注がれ、私達はおずおずとグラスを合わせた。
シェフが運んで来た料理は、色鮮やかなフランス料理。
器もとてもセンスの良いもので、食べる前からその美しさに私は魅了された。
「もし、口にあわんようじゃったら、すぐに違うものを用意させるから、言っておくれ。
ひか…じゃない…美幸さん、これはうまいぞ。」
おじいさんは美幸さんに気を遣いながら、あれこれと話しかける。
そのせいか、美幸さんもだんだんリラックスして来たのか、不思議な程、打ち解けて話をするようになっていた。
その時、私はふとあることに気が付いた。
(そういえば、最初に会った時にもおじいさんは何か言い間違えて…
今も確か「ひか」って……)
私はそのことが妙に気になった。
(……ひか…ひか………!
まさか「ひかり」!?)
急に鼓動が速くなった。
美幸さんのペンネームであり、小説の中での名前。
でも、ここでは美幸さんがひかりさんだということを知ってる人は少ないはず。
もしも、このおじいさんがそのことを知ってるとしたら、それは一体なぜ…!?
「あ、おじいさん……まだ名前聞いてなかったね。」
「わしは大河内健三郎じゃ。」
「……なんだか迫力のある名前だね。
あ、でも、表札には確か……」
「大河内健三郎なんて堅苦しいじゃろ?
だから、皆には気軽に健爺と呼んでほしくてな。
それでKEN-Gなんじゃ。」
「そうなんだぁ…
それにしても、KEN-Gのおじいさんは、すごいお金持ちなんだね。」
「金がすべてだなんて思っとらんが、ないよりはあった方が良いからのう。」
二人の会話は、どこかおかしな会話だった。
どこがと言われると、すぐにはわからないのだけど……
でも、美幸さんはごく自然に話されている。
(……私は考えすぎているのかしら?)
(うわぁ…!)
通された食堂は、ヨーロッパの宮殿のような華美な造りの部屋で…
広さは……一体どのくらい?
もしかしたら百畳程はあるかもしれない。
食堂というよりは、パーティルームといった感じで、広過ぎて全然落ち着かない。
「あらためて…今日は来てくれてどうもありがとう。」
席に着くと、おじいさんがにこにこしながらそうおっしゃった。
大金持ちなのに、高ぶった所のない感じの良いおじいさんだけど…
美幸さんのことを見る目が、ちょっと尋常ではないように思えて、そのことだけが私は少し気がかりだった。
「こ、こちらこそ、お招きいただいてどうもありがとうございます。」
美幸さんは俯いたまま小さな声でそう言って…
「では、まずは乾杯じゃな。」
上品なデザインのグラスに食前酒が注がれ、私達はおずおずとグラスを合わせた。
シェフが運んで来た料理は、色鮮やかなフランス料理。
器もとてもセンスの良いもので、食べる前からその美しさに私は魅了された。
「もし、口にあわんようじゃったら、すぐに違うものを用意させるから、言っておくれ。
ひか…じゃない…美幸さん、これはうまいぞ。」
おじいさんは美幸さんに気を遣いながら、あれこれと話しかける。
そのせいか、美幸さんもだんだんリラックスして来たのか、不思議な程、打ち解けて話をするようになっていた。
その時、私はふとあることに気が付いた。
(そういえば、最初に会った時にもおじいさんは何か言い間違えて…
今も確か「ひか」って……)
私はそのことが妙に気になった。
(……ひか…ひか………!
まさか「ひかり」!?)
急に鼓動が速くなった。
美幸さんのペンネームであり、小説の中での名前。
でも、ここでは美幸さんがひかりさんだということを知ってる人は少ないはず。
もしも、このおじいさんがそのことを知ってるとしたら、それは一体なぜ…!?
「あ、おじいさん……まだ名前聞いてなかったね。」
「わしは大河内健三郎じゃ。」
「……なんだか迫力のある名前だね。
あ、でも、表札には確か……」
「大河内健三郎なんて堅苦しいじゃろ?
だから、皆には気軽に健爺と呼んでほしくてな。
それでKEN-Gなんじゃ。」
「そうなんだぁ…
それにしても、KEN-Gのおじいさんは、すごいお金持ちなんだね。」
「金がすべてだなんて思っとらんが、ないよりはあった方が良いからのう。」
二人の会話は、どこかおかしな会話だった。
どこがと言われると、すぐにはわからないのだけど……
でも、美幸さんはごく自然に話されている。
(……私は考えすぎているのかしら?)
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
グランディア様、読まないでくださいっ!〜仮死状態となった令嬢、婚約者の王子にすぐ隣で声に出して日記を読まれる〜
月
恋愛
第三王子、グランディアの婚約者であるティナ。
婚約式が終わってから、殿下との溝は深まるばかり。
そんな時、突然聖女が宮殿に住み始める。
不安になったティナは王妃様に相談するも、「私に任せなさい」とだけ言われなぜかお茶をすすめられる。
お茶を飲んだその日の夜、意識が戻ると仮死状態!?
死んだと思われたティナの日記を、横で読み始めたグランディア。
しかもわざわざ声に出して。
恥ずかしさのあまり、本当に死にそうなティナ。
けれど、グランディアの気持ちが少しずつ分かり……?
※この小説は他サイトでも公開しております。
チクタクの森【完結編】
神在琉葵(かみありるき)
ファンタジー
♪
チクタクチクタク
時計が刻むよ
一分、一秒、一時間
チクタクチクタク
大事な時間
大事な時計~
一人にひとつ
チクタクチクタク
※表紙画はハチムラリン様に描いていただきました。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
処刑された令嬢、今世は聖女として幸せを掴みます!
ミズメ
恋愛
かつて侯爵令嬢マリエッタは、聖女を害したとして冤罪で処刑された。
その記憶を持ったまま、マリエッタは伯爵令嬢マリーとして生を受ける。
「このまま穏やかに暮らしたい」田舎の伯爵領で家族に囲まれのびのびと暮らしていたマリーだったが、ある日聖なる力が発現し、聖女として王の所に連れて行かれることに。玉座にいた冷徹な王は、かつてマリエッタを姉のように慕ってくれていた第二王子ヴィンセントだった。
「聖女として認めるが、必要以上の待遇はしない」
ヴィンセントと城の人々は、なぜか聖女を嫌っていて……?
●他サイトにも掲載しています。
●誤字脱字本当にすいません…!

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる