１ページ劇場⑤

夢に向かって

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「次はこの衣装に着替えて。」

「はい！」

黄色い菜の花畑の前や桜の木の下で、私は何種類もの衣装を、まるで着せ替え人形みたいに何度も着替えている。
着替えるのは車の中。



私はモデルだ。
主に、通販のカタログ用の写真を撮っている。
私の夢は、パリコレに出ること。
昔から背が高くて、痩せ型だったから、まわりからモデルになれば？ってすすめられた。
そのうち、私はすっかりその気になって、地元の大学を卒業したら、東京に出て、モデル事務所を探した。
そして、あるモデル事務所に入ったのだけど、それですぐにパリコレに出られるほど、世間は甘くなかった。
私に来るのは、通販かチラシの仕事ばかりだった。
しかも、そんなにいつもあるわけじゃないから、普段からバイトをしている。
東京は、家賃も物価も地元よりずっと高いから、頑張るしかない。



地元の友達や両親も、応援してくれてるから、今更やめるわけにはいかない。
お母さんは、通販を利用して、「モデルさんが可愛い」とか、わざわざ感想を書いてくれてたりする。
とてもありがたい。



東京に来て初めて知ったけど、身長170cmはモデルの世界では、大きな方ではなかった。
こんな身長でパリコレに出られるのかどうかはわからないけど、頑張るしかない。
いろんなことを知らないままに、東京に出てきて良かったのかもしれない。
いろいろ知ってたら、自信がなくなって、とても出てこられなかっただろうから。
今でも、正直いうと少し弱気にはなっている。
だけど、そんな時は地元の皆んなの顔や声を思い出す。



「マチ子、頑張れ！」

「ファイトだよ！」



うん、頑張るよ！
カタログの写真にも手を抜かない。
今は、夢を叶えるための最初の一歩だから。



菜の花畑の鮮やかさにも負けない笑顔で、私はポーズを決めた。