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餅騒動
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「餅つき機で良いってば!」
「機械でついた餅なんか、うまいはずがない!」
目が覚めて、居間に行ったら、親父とおふくろが大きな声を出していた。
「なんだよ、朝っぱらからうるさいなぁ。」
「お父さんがわからず屋だから、怒ってんのよ。」
「なんだと~!わからず屋なのはお前の方だろうが。」
「まぁまぁ、二人共落ち着いて。」
二人をなだめ、ソファに座らせた。
話を聞くと、問題は餅のことだとわかった。
正月と言えば餅。
うちの家族は皆、餅が好きだ。
だからこそ、両親は手作りにこだわりたいらしい。
父は、家で餅をつきたいらしいのだけど、母は餅つき機でつくと言って、そこでもめてるんだ。
「なぁ、英二、自分でついた方が絶対うまいよな。」
「う~ん…」
はっきりと返事が出来ないのには、理由があった。
「なんだよ、お前、昔は俺の早餅つきがかっこいいって言ってたじゃないか。」
そう、確かに、高速で餅をつくおやじの姿はかっこいいと思ってた。
幼馴染の加藤さんと二人で、息のあった餅つきを見せてくれた。
だけど、俺が小6の時、親父は餅つきの最中にぎっくり腰になった。
正月は寝たきりだったんだ。
それから、親父は餅をつくのをやめ、餅は売ってるものを買うようになった。
それから6年後、俺が高3の時に、親父がまた餅をつくって言い出したんだ。
ところが、久しぶりだったせいか、早餅つきは加藤さんとのバランスがくずれ、親父は加藤さんの手をついてしまった。
加藤さんは骨折した。
それから、また餅つきをやめることになったんだ。
そして、今年、母さんは家電店で餅つき機を見て衝動買いをした。
これで美味しい餅を作ると張り切っていた。
それに親父が対抗して、また餅をつくって言い出したようだ。
「もう加藤さんは合いの手はしてくれないわよ。」
「くっ、じゃあ、英二…おまえがやれ。」
「えーっ!俺、そんなことやったことないし…怖いよ。」
「合いの手なしじゃ、お餅はつけないわよ。」
おふくろは勝ち誇ったように言う。
「じゃあ、便利屋かなんか雇う!」
親父も意地になっている。
「とりあえず、一度、餅つき機を使ってみようよ。
それで美味しくなかったら、父さんについてもらおう。」
「わかったわ!」
*
「本当にうまいな。」
「本格的だな。」
正月が来て、食卓には餅つき機でついた餅がお雑煮となって並んだ。
じいちゃんやばあちゃんも、餅つき機の餅が気に入ったようだ。
「便利な世の中になったもんだな。」
「加藤さんにも持って行ってあげたら?」
皆が笑顔で餅を頬張った。
これから先も、我が家では餅つき機が活躍しそうだ。
「機械でついた餅なんか、うまいはずがない!」
目が覚めて、居間に行ったら、親父とおふくろが大きな声を出していた。
「なんだよ、朝っぱらからうるさいなぁ。」
「お父さんがわからず屋だから、怒ってんのよ。」
「なんだと~!わからず屋なのはお前の方だろうが。」
「まぁまぁ、二人共落ち着いて。」
二人をなだめ、ソファに座らせた。
話を聞くと、問題は餅のことだとわかった。
正月と言えば餅。
うちの家族は皆、餅が好きだ。
だからこそ、両親は手作りにこだわりたいらしい。
父は、家で餅をつきたいらしいのだけど、母は餅つき機でつくと言って、そこでもめてるんだ。
「なぁ、英二、自分でついた方が絶対うまいよな。」
「う~ん…」
はっきりと返事が出来ないのには、理由があった。
「なんだよ、お前、昔は俺の早餅つきがかっこいいって言ってたじゃないか。」
そう、確かに、高速で餅をつくおやじの姿はかっこいいと思ってた。
幼馴染の加藤さんと二人で、息のあった餅つきを見せてくれた。
だけど、俺が小6の時、親父は餅つきの最中にぎっくり腰になった。
正月は寝たきりだったんだ。
それから、親父は餅をつくのをやめ、餅は売ってるものを買うようになった。
それから6年後、俺が高3の時に、親父がまた餅をつくって言い出したんだ。
ところが、久しぶりだったせいか、早餅つきは加藤さんとのバランスがくずれ、親父は加藤さんの手をついてしまった。
加藤さんは骨折した。
それから、また餅つきをやめることになったんだ。
そして、今年、母さんは家電店で餅つき機を見て衝動買いをした。
これで美味しい餅を作ると張り切っていた。
それに親父が対抗して、また餅をつくって言い出したようだ。
「もう加藤さんは合いの手はしてくれないわよ。」
「くっ、じゃあ、英二…おまえがやれ。」
「えーっ!俺、そんなことやったことないし…怖いよ。」
「合いの手なしじゃ、お餅はつけないわよ。」
おふくろは勝ち誇ったように言う。
「じゃあ、便利屋かなんか雇う!」
親父も意地になっている。
「とりあえず、一度、餅つき機を使ってみようよ。
それで美味しくなかったら、父さんについてもらおう。」
「わかったわ!」
*
「本当にうまいな。」
「本格的だな。」
正月が来て、食卓には餅つき機でついた餅がお雑煮となって並んだ。
じいちゃんやばあちゃんも、餅つき機の餅が気に入ったようだ。
「便利な世の中になったもんだな。」
「加藤さんにも持って行ってあげたら?」
皆が笑顔で餅を頬張った。
これから先も、我が家では餅つき機が活躍しそうだ。
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