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ひらひらり

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(あぢい~…)



最近の地球はどうにかなっている。
まだ4月だっていうのに、この暑さは一体なんだ!?
我慢できずに、俺はスーツの上着を脱いだ。
だけど、まだ暑い。
こんな日の外回りは地獄だ。



(えっ!?)



ふと通りかかったビルの電光掲示板には、『現在の気温32度』とあった。
なんだと、まだ4月だというのに、もう真夏日だと~!
誰にぶつけたら良いのかわからない怒りに、俺は震えた。



怒ってる場合じゃない。
とにかく、今は仕事だ。
それが終わったら、かき氷を食べよう。
俺は、かき氷だけを楽しみに、大量の汗を流しながら仕事をこなした。



(かき氷!かき氷!)



やっと仕事が終わり、俺は、小走りで氷屋へ向かった。
夕方だというのに、まだ暑い。



今、目指しているのは天然氷で作る本格的なかき氷の店だ。
ちょっと高いが、味は抜群。
今日はフルーツをたくさんトッピングして、豪華なやつを食べてやる!



「え、えぇっ!」



汗にまみれ、ようやくたどり着いたかき氷屋。
だが、そこには『臨時休業』の貼り紙があった。



嘘だよな?
嘘だと言ってくれ!
俺は今日、ここのかき氷だけを支えに頑張ったんだぞ。
なのに、この仕打ちはなんだ!?
善良な一市民である俺が、なぜ、こんな目に?



(神は俺を見放したのか!?)



俺は肩を落とし、足を引きずりながら駅に向かった。
もはや、俺は悲劇の主人公でしかない。
子供だったら、地べたにひっくり返って泣いてるぞ。



しばらく進むと、どこからか涼しい風が吹いてきた。
汗がすーっと引いていく。
そのうち、風に何かが混じるようになって来た。
桜だ!桜吹雪だ。



(わぁ~!)



そこには満開の桜並木が続いていた。
連なる姿は息を飲むほどの美しさだ。



つい今し方までの怒りが嘘のように消えていく。
4月といえば桜だ。



地球は、それを忘れていなかった。



桜並木を通り抜ける頃には、汗はすっかり乾き、真夏日のことなんて忘れて清々しい気分になっていた。
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