１ページ劇場⑤

記念日

１

「は、は、ハーックション
！」



朝、目が覚めたら、えらくデカイくしゃみが出た。



ま、ま、まさか、ついに花粉症デビュー？
そんな馬鹿な、俺は、花粉症対策は常にやって来た。
乳酸菌飲料や甜茶を飲み、ヨーグルトやれんこんを食べ、ビタミンDのサプリをのみ、仕上げに栄養ドリンクをぐびぐび。
これを一年365日、１日も欠かすことなく続けて来たんだ。
そんな俺が、花粉症になんかなるはずがない！
そうだ、絶対に違う。
これは、誰かが俺の噂をしているだけだ。
そうだよ、くしゃみ１回は誰かが俺の悪い噂をしてるんだ。



「は、ハックション！」

「ハクション！」



さらに、２回のくしゃみが飛び出た。
２回は笑われてて、３回は、誰かが俺に惚れてるんだ。
おい、おい、誰だ？
俺に惚れてるのは…
やっぱり、職場の女子社員か？
北川なら嬉しいけど、さすがにそれはないか？
いや、わからないぞ。
北川かもしれない！



そう思うと、途端に元気が出た。
ベッドから起き上がり、大きく伸びをした。



「ハックション！」



なにぃ～！
４回目だとぉ～！
４回目はなんだ？何なんだ？
俺はスマホで検索した。



『４回目のくしゃみは風邪』



なんだ。そうか、風邪だったんだ。
最近は、暑かったり肌寒かったりが激しかった。
風邪をひくのも当然だ。



「さぁ、今日も頑張るぞ！」

気合いと共に窓を開ける。



「くしゃん、くしゃん、くしゃん、くしゃん！」



くしゃみが止まらない。
涙は出るし、鼻水は垂れるし、もう無茶苦茶だ。



この時、俺は思った。



俺は負けたのだ、と。



（まぁ、35でデビューなら、普通だな。早くなくて良かった。）



今日は、ティッシュをたくさん買って会社に行こう。
あ、マスクも買わなきゃな。
まずは薬局だ。



この日は、俺の花粉症デビュー記念日となった。