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魔女の一撃

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「押さないで下さい!
商品は、多数準備してあります!押さないで!」



僕の働く百貨店で、新春セールが始まった。
ここのところ、この新春セールのため、ずっと残業続きだった。
だけど、仕方がない。
年に一度のイベントなのだから。
当日は、予想以上のお客様達が押し寄せた。
大変だけど、とても有難いことだ。
ここまで来たら、後はトラブルなく、売りまくるのみ。
僕は、人員整理のためにまた声を張り上げた。







「1時からのイベントも、トラブルがないように頼んだぞ!」

部長に肩を叩かれた。



今日は、昼ご飯も食べる時間がなく、ドリンク剤とゼリー飲料だけしか口に出来なかった。
でも、このイベントさえ無事に済ませれば、夜は少しはゆっくり出来るはずだ。



「じゃあ、行くか!」



催事場は、さっきよりも多くの人々でごったかえしていた。
それも当然のこと。
今回の新春セールの目玉は、今、人気絶頂のお餅ブラザーズのお笑いライブなのだから。
何を隠そう、この僕もお餅ブラザーズの大ファンだから、今日は楽しみで仕方なかった。



「皆様、お待たせしました。
お餅ブラザーズの登場です!」



会場が震えるような歓声がわきあがり、二人の若者がステージに駆け上がった。



「ぼた餅で~す!」

「焼き餅で~す!」

「二人合わせて、お餅ブラザーズで~す!」

会場の最後部で、僕は思わず歓声をあげそうになるのをぐっと堪え、思いっきり拍手をした。



やっぱり、生は迫力が違う。
声が腹から出てるし、二人の独特のノリが心地良い。
僕は社員だということも忘れて、大きな声で笑った。
ここのところの疲れが逆に、僕をハイテンションにしたようだ。



「ははははは…は…は?がっ!」



体をねじまげて大笑いしていた時、腰に激痛を感じ、僕はその場にくずおれた。



「森本、どうした!?」

「こ、こ、腰が……」

痛くて、話をすることさえままならない。
僕は部長に背負われ、その場を後にした。







「えっ!ぎっくり腰??」

整形外科で注射を打ってもらい、少しは痛みがマシになった。
でも、完治まではまだしばらくはかかるようだ。
酷い目にはあったけれど、新春セールは大成功。



(良かった……)

ベッドの上で、ついさっきの漫才を思い出し、幸せな気分に浸った。
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