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魔女の一撃
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「押さないで下さい!
商品は、多数準備してあります!押さないで!」
僕の働く百貨店で、新春セールが始まった。
ここのところ、この新春セールのため、ずっと残業続きだった。
だけど、仕方がない。
年に一度のイベントなのだから。
当日は、予想以上のお客様達が押し寄せた。
大変だけど、とても有難いことだ。
ここまで来たら、後はトラブルなく、売りまくるのみ。
僕は、人員整理のためにまた声を張り上げた。
*
「1時からのイベントも、トラブルがないように頼んだぞ!」
部長に肩を叩かれた。
今日は、昼ご飯も食べる時間がなく、ドリンク剤とゼリー飲料だけしか口に出来なかった。
でも、このイベントさえ無事に済ませれば、夜は少しはゆっくり出来るはずだ。
「じゃあ、行くか!」
催事場は、さっきよりも多くの人々でごったかえしていた。
それも当然のこと。
今回の新春セールの目玉は、今、人気絶頂のお餅ブラザーズのお笑いライブなのだから。
何を隠そう、この僕もお餅ブラザーズの大ファンだから、今日は楽しみで仕方なかった。
「皆様、お待たせしました。
お餅ブラザーズの登場です!」
会場が震えるような歓声がわきあがり、二人の若者がステージに駆け上がった。
「ぼた餅で~す!」
「焼き餅で~す!」
「二人合わせて、お餅ブラザーズで~す!」
会場の最後部で、僕は思わず歓声をあげそうになるのをぐっと堪え、思いっきり拍手をした。
やっぱり、生は迫力が違う。
声が腹から出てるし、二人の独特のノリが心地良い。
僕は社員だということも忘れて、大きな声で笑った。
ここのところの疲れが逆に、僕をハイテンションにしたようだ。
「ははははは…は…は?がっ!」
体をねじまげて大笑いしていた時、腰に激痛を感じ、僕はその場にくずおれた。
「森本、どうした!?」
「こ、こ、腰が……」
痛くて、話をすることさえままならない。
僕は部長に背負われ、その場を後にした。
*
「えっ!ぎっくり腰??」
整形外科で注射を打ってもらい、少しは痛みがマシになった。
でも、完治まではまだしばらくはかかるようだ。
酷い目にはあったけれど、新春セールは大成功。
(良かった……)
ベッドの上で、ついさっきの漫才を思い出し、幸せな気分に浸った。
商品は、多数準備してあります!押さないで!」
僕の働く百貨店で、新春セールが始まった。
ここのところ、この新春セールのため、ずっと残業続きだった。
だけど、仕方がない。
年に一度のイベントなのだから。
当日は、予想以上のお客様達が押し寄せた。
大変だけど、とても有難いことだ。
ここまで来たら、後はトラブルなく、売りまくるのみ。
僕は、人員整理のためにまた声を張り上げた。
*
「1時からのイベントも、トラブルがないように頼んだぞ!」
部長に肩を叩かれた。
今日は、昼ご飯も食べる時間がなく、ドリンク剤とゼリー飲料だけしか口に出来なかった。
でも、このイベントさえ無事に済ませれば、夜は少しはゆっくり出来るはずだ。
「じゃあ、行くか!」
催事場は、さっきよりも多くの人々でごったかえしていた。
それも当然のこと。
今回の新春セールの目玉は、今、人気絶頂のお餅ブラザーズのお笑いライブなのだから。
何を隠そう、この僕もお餅ブラザーズの大ファンだから、今日は楽しみで仕方なかった。
「皆様、お待たせしました。
お餅ブラザーズの登場です!」
会場が震えるような歓声がわきあがり、二人の若者がステージに駆け上がった。
「ぼた餅で~す!」
「焼き餅で~す!」
「二人合わせて、お餅ブラザーズで~す!」
会場の最後部で、僕は思わず歓声をあげそうになるのをぐっと堪え、思いっきり拍手をした。
やっぱり、生は迫力が違う。
声が腹から出てるし、二人の独特のノリが心地良い。
僕は社員だということも忘れて、大きな声で笑った。
ここのところの疲れが逆に、僕をハイテンションにしたようだ。
「ははははは…は…は?がっ!」
体をねじまげて大笑いしていた時、腰に激痛を感じ、僕はその場にくずおれた。
「森本、どうした!?」
「こ、こ、腰が……」
痛くて、話をすることさえままならない。
僕は部長に背負われ、その場を後にした。
*
「えっ!ぎっくり腰??」
整形外科で注射を打ってもらい、少しは痛みがマシになった。
でも、完治まではまだしばらくはかかるようだ。
酷い目にはあったけれど、新春セールは大成功。
(良かった……)
ベッドの上で、ついさっきの漫才を思い出し、幸せな気分に浸った。
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