１ページ劇場⑤

親孝行

１

今日はクリスマス。
クリぼっちなのは、予想通りだが、やっぱりがっかりする。
しかも、今日はとても寒い。
朝から雪が舞っている。
だけど、僕は寒さを感じない。
それはババシャツのおかげだ。
母さんが送ってくれたババシャツは、確かにすごく暖かい。
だけど、最初は抵抗があった。
なんせ『ババシャツ』なんだから。
僕はまだ若いし、しかも男なんだ。
どうせなら、メンズの肌着を送ってくれたら良いのに、母さんはババシャツの方が暖かいから、と譲らなかった。
風邪を引いて寒気が止まらなかった時、藁にもすがる想いでババシャツを着てみたら、そのお陰で寒気が止まり、以来、僕はババシャツを愛用している。



こんな僕だから、クリぼっちになるんだろう。
ある意味、クリぼっちは母さんのせいでもある。
クリスマスなんて、楽しくもなんともないけど、それはそれでなんだか悔しい。
とりあえず、クリスマスケーキでも買うか。



地味な洋菓子店に行こうとした時、僕の前に一人の女性が立ちはだかった。
すごく可愛い女の子だ。
スタイルもバツグンだ。



「お兄さん、今、お時間ありますか？」

「え？は、はい。」

僕は正直に答えた。



「鍋はお好きですか？」

えーっ！逆ナン？
クリスマスにこんな可愛い子と鍋パーティ？



「は、はい！大好きです！」

「では……」



＊



「はぁ～～……」

僕は大きなため息を吐いた。
自分の馬鹿さ加減に呆れ果てる。



女の子について近くのビルに入り…
僕は鍋のセットを買わされた。
なんと30万だ。
何代にも渡って使える最高級品だとかなんとか言いくるめられて。
ほとんど料理の出来ない僕に、鍋なんて不要なのに…



「……ははははは。」

虚しい笑いがこみあげる。



そうだ、これは母さんへのクリスマスプレゼントにしよう。
帰省する時に持って帰れば良い。
数日遅れのクリスマスプレゼント。
きっと母さんは喜ぶぞ。
もちろん、30万もすることは内緒だけど。



（頑張って、ローン払おう…）



一筋の涙が頬を伝った。