１ページ劇場⑤

善き日

１

「どう？おかしくない？」

「あぁ、すごく似合ってる。」

近くのショッピングセンターが開くと同時に店に入り、三軒目の店で、私はモスグリーンのニットのワンピースを買うことに決めた。



「じゃあ、カードで。」

ワンピは雅紀が買ってくれた。
けっこう高かったのに良いのかな。



「手土産は何が良いかな？」

「いちごだな。」

「いちご？」

「うん、両親二人とも、いちごが大好きなんだ。」

ちょっと高級ないちごを手土産にした。
粒も大きいし、真っ赤で香りがとっても良い。
思わず食べたくなってしまういちごだ。



雅紀の実家は、うちから電車で４駅だ。
お正月だからか、席は思ったよりも空いていた。



「昨日、私、富士山の夢、みたんだよ！
縁起が良いよね。
あと、鷹となすびが出てきたら最高だったのに。
でも、富士山となすびと鷹って、なんかおかしな組み合わせだよね。」

「なんで、その三つか知ってる？」

「え？理由なんてあんの？」

「あるよ。それはね。有名な三大仇討ちから来てるんだ。
富士の裾野で果たされた曾我兄弟、浅野家の家紋が鷹の羽根だった赤穂浪士、茄子の産地の伊賀上野の仇討ちから来てるらしいよ。」

雅紀は、豆知識的な話を良く知っている。



「へぇ、そうなんだ。
でも、仇討ちと初夢って、なんか関係があるの？」

「その三つの仇討ちは、みんな成功してるから、つまりは縁起が良いってことなんだよ。」

なんだかいい加減な気もするけど、確かに縁起が良いと言われると気分は良い。
今日は、富士山を夢に見たし、ワンピースは買ってもらえたし、ラッキーな日だから、きっと、雅紀のご両親ともうまくいく。
そんなことを自分に言い聞かせた。



寒いけど、お天気は快晴。
雅紀の実家に近付く毎に、緊張感は高まっていくけれど、きっと大丈夫。
私は今一度、自分にそう言い聞かせた。