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日傘(かに座)
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(……やっぱり、会える筈なんてないよね。)
じりじりと照り付ける太陽と、小一時間戯れた私は、自分の馬鹿さ加減を嘆きながら家路に着いた。
その時…ちょうど向こう側から歩いて来る日傘に出会った。
それをさしていたのは、誠実そうな顔をした長身の若い男性で…しかも意外とかっこいい。
(どうしよう…)
男性との距離が近付くごとに、私の胸の鼓動は速くなる。
私がもぞもぞしながらその傘をみつめてたせいなのか、男性は私の目の前に来て立ち止まった。
間近で見た男性は、思った以上のイケメン…!
あぁ、どうしよう!
「もしかして…」
「……は…はい!」
私は暑さと男性のかっこ良さに頭がくらくらして倒れそうだった。
「この日傘の持ち主さん?」
「ええっ!」
思わぬ言葉に私は自分でも気付かないうちに素っ頓狂な声を上げていた。
なんでも、彼はこの先の公園でこの日傘をみつけたのだという。
ちょうど雨が降りそうだったので、このまま置いていては綺麗な傘が汚れてしまうと思い家に持ち帰り、なんとか持ち主に返してあげたいと、こうして休みの日になると日傘をさして近所を歩いていたのだとか。
そういえば、私はその日、荷物を持ったお婆さんに道を聞かれ、そこまで連れて行く途中にお婆さんをベンチに座らせたことを思い出した。
そうそう、雨が降りそうだったから降る前にと思って慌てて帰って…でも、雨はほんの一瞬降っただけですぐにやんだんだ。
「で…でも、どうして私が持ち主だってわかったんですか…?」
「だって、君、すごく真剣にこの傘を見てたし…ほら…」
男性が指差したのは、私のはいてたひまわりモチーフの付いたサンダルだった。
「あ…あぁ…」
「でも、良かった。
持ち主さんがみつかって。
じゃあ…はい。」
男性は日傘を私に手渡した。
「あ…ありがとうございました。」
「じゃあね!」
手を振って去って行くその人の後ろ姿をみつめながら、私は思わずその後を追いかけた。
「ま、待って下さい!
お…お礼をしろってひまわりが……」
私のどこにそんな勇気があったのかわからない。
でも、そのまま別れてしまうのはいやだった。
焦って咄嗟にわけのわからないことを口走ってしまった私に、男性はにっこりと微笑んだ。
じりじりと照り付ける太陽と、小一時間戯れた私は、自分の馬鹿さ加減を嘆きながら家路に着いた。
その時…ちょうど向こう側から歩いて来る日傘に出会った。
それをさしていたのは、誠実そうな顔をした長身の若い男性で…しかも意外とかっこいい。
(どうしよう…)
男性との距離が近付くごとに、私の胸の鼓動は速くなる。
私がもぞもぞしながらその傘をみつめてたせいなのか、男性は私の目の前に来て立ち止まった。
間近で見た男性は、思った以上のイケメン…!
あぁ、どうしよう!
「もしかして…」
「……は…はい!」
私は暑さと男性のかっこ良さに頭がくらくらして倒れそうだった。
「この日傘の持ち主さん?」
「ええっ!」
思わぬ言葉に私は自分でも気付かないうちに素っ頓狂な声を上げていた。
なんでも、彼はこの先の公園でこの日傘をみつけたのだという。
ちょうど雨が降りそうだったので、このまま置いていては綺麗な傘が汚れてしまうと思い家に持ち帰り、なんとか持ち主に返してあげたいと、こうして休みの日になると日傘をさして近所を歩いていたのだとか。
そういえば、私はその日、荷物を持ったお婆さんに道を聞かれ、そこまで連れて行く途中にお婆さんをベンチに座らせたことを思い出した。
そうそう、雨が降りそうだったから降る前にと思って慌てて帰って…でも、雨はほんの一瞬降っただけですぐにやんだんだ。
「で…でも、どうして私が持ち主だってわかったんですか…?」
「だって、君、すごく真剣にこの傘を見てたし…ほら…」
男性が指差したのは、私のはいてたひまわりモチーフの付いたサンダルだった。
「あ…あぁ…」
「でも、良かった。
持ち主さんがみつかって。
じゃあ…はい。」
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「あ…ありがとうございました。」
「じゃあね!」
手を振って去って行くその人の後ろ姿をみつめながら、私は思わずその後を追いかけた。
「ま、待って下さい!
お…お礼をしろってひまわりが……」
私のどこにそんな勇気があったのかわからない。
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