上 下
72 / 86
第11章…お見合い

16

しおりを挟む
その日以来、カパエルはアンジェリーヌを避けるようになった。
寂しさを感じるアンジェリーヌは、その気持ちを埋めるかのようにミカエルの誘いを受けることが多くなり……



やがて、瞬く間に二ヶ月の時が流れた。







「アンジェリーヌ様、今日は薔薇を持って来ました。
最近のあなたはなんだかずっとお寂しそうですから、少しでも元気が出ればと思いまして……」

「まぁ…綺麗な薔薇……
ミカエル様、どうもありがとうございます。」

「喜んでいただけて光栄です。」

ミカエルが白い歯を輝かせながら、笑顔を見せる。



(この方…本当にお優しい方なんだわ。
私のことをいつも気遣って下さって……カパエルの言う通り、こんな方と結婚したら幸せになれるかもしれない……
そうなったら、きっとカパエルも喜んでくれる…!)



「ミカエル様……結婚について、ちょっとご相談したい事があるのですが……」

「えっ!そ、それでは……」

アンジェリーヌは黙って小さく頷いた。



「本当ですか!アンジェリーヌ様!!」



(やっと俺の魅力に気付いたか!
時間はかかったが、頑張った甲斐があったってもんだぜ!
猫かぶるのももういいかげん限界だったからな!
あぁ、早く、あんなことやこんなことがやりてぇ~!!)



「はい。
やっと自分の気持ちが固まったように思います。
ですが……一つだけ問題があるのです。」

「問題が?一体、どんなことなのですか?」

「実は……私は幼い頃に母を亡くし、父はその後再婚もせずずっと一人で生きてまいりました。
私には兄弟もいませんし、私がフィンラの国を継がねばならないのです。
ですが、あなた様はこのノルディーナ王国の大切な後継者です。
あなたのご両親は私との結婚をお許しにならないのではないでしょうか?」

「なんだ、そんなことですか。
そんなことなら、全然大丈夫です!
両親は私の言う事をとてもよく尊重してくれますから。
式はいつにしましょう!?
新婚旅行は?
あぁ、夢みたいです!」

「とにかく、そのことを国王様や王妃様とよくご相談なさって下さい。」

「あなたは心配性ですね。
では、今から話してきます。
なぁ~に、何の心配もいりません。
すぐに戻ってきますからね。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

選ばれたのは美人の親友

杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

妹の妊娠と未来への絆

アソビのココロ
恋愛
「私のお腹の中にはフレディ様の赤ちゃんがいるんです!」 オードリー・グリーンスパン侯爵令嬢は、美貌の貴公子として知られる侯爵令息フレディ・ヴァンデグリフトと婚約寸前だった。しかしオードリーの妹ビヴァリーがフレディと一夜をともにし、妊娠してしまう。よくできた令嬢と評価されているオードリーの下した裁定とは?

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

処理中です...