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それでも君を愛せて良かった

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 「アベル…どうした。
まだ体調が良くないのか?
さっきからあくびばかりしてるじゃないか。」

 「大丈夫だよ、父さん。
 心配しないで。
しばらく横になってたらすぐに良くなるから。」

 昨夜、僕はあの小部屋を掃除をした後ファビエンヌと夜明け近くまで話してて、慌てて部屋に戻った。
でも、父さんはけっこう早起きだし、朝食を作るのは僕の役目だからほとんど寝る暇がなく、それで眠かっただけなんだけど、そんなことは言える筈がなかった。



 「……いや、こんなに良くならないのはおかしい。
 何かあってからじゃ大変だ。
 今日は隣町の診療所まで行こう。」

 「ぼ、僕は、本当に大丈夫だよ。
お医者さんの所なんて行かないよ。」

 「だめだ。
 手遅れになったらどうするんだ!?」

 「ほ、本当に大丈夫だって。
じゃ、父さん…今日一日だけ様子をみてよ。
 明日も具合が悪かったら、必ず、診療所へ行くから。」

 「そうか…じゃあ、今日まで様子をみてみよう。
だが、明日も治らなかったら…」

 「……わかってるよ。」



 困ったことになってしまった。
 出来れば、もうしばらく具合が悪いふりをして、ずっとファビエンヌと一緒にいようと考えていたのだけれど、そうもいかなくなった。
 考えてみれば、僕が体調を崩すことは滅多になくて、ちょっとした風邪をひいてもすぐに治ってしまう。
だからこそ、こんなに何日も体調不良が長引いていることに、父さんは心配しているんだろう。

 診療所に行ったら、僕が病気じゃないことはバレてしまうだろうし、それよりも診療所への行き帰りに長い時間を取られてしまう。
 当然、その間は、ファビエンヌに会いに行くことも出来ない。



 (寂しいけど、彼女と会う時間を少し減らすしかないな。
そして、体調を整えて、仕事も普段通りにやらなくちゃ。
 彼女にあげるものも作らなきゃならないし…)



 僕は、そんな決意を胸に、無理してあまり食べたくもない朝食を流しこんだ。

 
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