十五の石の物語

ルカ(聖夜月ルカ)

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the past story

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「ベル…!」

 力の入らない包帯に巻かれた両手で、ロジェはベルの頬にそっと触れた…
たくさんの白い薔薇の花に囲まれたベルは安らかな顔をしていた…

「ベル……!!
すまなかった…!
 君の気持ちに気付く事が出来なくて…
ベル~~…!!」

ロジェは棺に取りすがって泣いていた…
ヴァンヴェールがロジェにハンカチをそっと手渡す。

 「ありがとう…神父様…ラカーユ家の者は…ルノーはベルを残してもう帰ってしまったんですか?」

 「それは…」

 「ラカーユ家では『そんな恥さらしな女は引き取る事は出来ない。』とベルをここに置いて行ったんです!」

アンヌが横から口をはさんだ…

「くっ…」

ロジェの身体が怒りのため小刻みに震えた。

 「…かわいそうなベル…
でも…もう心配しなくて良いんだよ…
 ……神父様、アンヌさん…今夜はベルと2人っきりにしてもらえないでしょうか?」

 「…分かりました…」

ロジェの気持ちを考え、アンヌとヴァンヴェールはその場を離れた…



「…ベル…
やっと2人っきりになれたね…
今まで辛い想いをさせてごめんよ…
 …でも、今日から2人はずっと一緒だよ。
これから向こうで幸せになろうね…
向こうには君のご両親や、僕の両親もいてくれる…

そうだ…!
 向こうには神父様のお兄様もいらっしゃるんだよ。
 神父様に僕らの結婚式を挙げてもらおう…!
 両親にも来てもらおうね…

 …ほら…ベル…
見てごらん。
とっても綺麗なヴェールだろう?
 旅先で買ってきたんだ…君に似合うと思ってね…」

ロジェは口を使ってリボンをほどくと、中ならヴェールを取り出し、ベルの頭にそっとかけた。

 「やっぱり…思った通りだった。
よく似合うよ…ベル…
とても綺麗だ…
ベル…愛してるよ…
これからもずっと…」

ロジェは冷たいベルの唇にそっと口付けた…

「…今すぐ逝くからね…」

ロジェは小さな小瓶を手の平でつかみ、蓋を口で回し開けると中のものをそのまま飲み干した…

「う…うぅ…っ…
べ…ベル
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