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the past story
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ついに婚礼の朝が来た。
式は、ベルのたっての希望でヴァンヴェールの教会で執り行われることになっていた。
ヴァンヴェールはこの式に何か深い事情があることを薄々気付いてはいたが、ベルの顔色を察し、深くたずねることはしなかった。
教会は着飾った貴族や町の名士達がで溢れかえっていた。
ベルはその豪華なウェディングドレスさえもがくすんで見えるほど、美しかった。
美しすぎる花嫁の登場にその場からは感嘆の声がわきあがった。
ルノーはそのことで上機嫌だ。
やがて厳かに、結婚式が執り行われる。
「汝、ルノー・ド・ラカーユはベル・コーレイを生涯の妻と定め、病める時も健やかなる時もこの者を助け生涯変わらず愛し続けることを誓いますか?」
「はい、誓います。」
「汝、ベル・コーレイは…」
「…誓いません…」
「ベルさん…?!」
「…私は、このような悪魔と永遠の愛など誓えません!
…私が愛しているのは…生涯ロジェ一人だけです…!」
そういうと、ベルはドレスの下に隠し持った鋭いナイフを自分の胸に深くつき立てた。
地しぶきが上がり、真っ白なドレスはみるみるうちに、真っ赤に染まっていく。
参列客も、そしてあのルノーさえもが悲鳴をあげながら我先にと教会の外へと走りさって行く…
「神父様…大変なことをしてしまって…申し訳…ありません…」
「ベルさん、話さないで!
すぐにお医者様を呼びますから気をしっかり!」
ヴァンヴェールはベルを抱きおこし首元を押さえるが、熱い血は止まることを知らず、どくどくと溢れ続ける。
「神父…様…
どうか…ロジェに…
守ってあげられなくて、ごめんなさい…と…
そして…あなたのことだけを…ずっと、愛していま…した…と…つた…」
力なく差しのべられていた手ががくんと落ちた…
「ベルさん!ベルさんっっ!!」
その様子を長椅子の後ろから震えながら見ていたアンヌがベルに駆け寄る。
「ベル~~っっ!!」
------------------------------------------
アンヌとヴァンヴェールはベルの亡骸から血をぬぐい、包帯を巻いて新しい服に着替えさせた。
しばらくすると、ラカーユ家の使用人が訪れ、そんな恥さらしの女はこちらでは引き取るわけにはいかない。
どうとでも好きなように始末するようにと伝えて帰って行った。
「可哀想なベル…
こんなことになるのなら、もっと優しくしてやれば良かった…
ベル…許しておくれよ。
私はあんたに嫉妬してただけなんだよ。」
アンヌは事のすべてをヴァンヴェールに語った。
「…なんと酷い…
何かわけがある事はわかってましたが、まさかそんなことになっていようとは…」
「…ベルは、ロジェさんに手を出されることをとても心配していたようでした。
だからこそ、あんな男のいいなりになっていたのです。
…神父様、お願いです!
ロジェさんにどうかこのことを伝えて下さい。
今までのことをすべて…!」
「わかりました。
私は死ぬ間際のベルさんにも頼まれているのです。
ベルさんの想いをしっかりとロジェさんに伝えてまいりましょう。」
ヴァンヴェールは、ロジェの家に向かった。
式は、ベルのたっての希望でヴァンヴェールの教会で執り行われることになっていた。
ヴァンヴェールはこの式に何か深い事情があることを薄々気付いてはいたが、ベルの顔色を察し、深くたずねることはしなかった。
教会は着飾った貴族や町の名士達がで溢れかえっていた。
ベルはその豪華なウェディングドレスさえもがくすんで見えるほど、美しかった。
美しすぎる花嫁の登場にその場からは感嘆の声がわきあがった。
ルノーはそのことで上機嫌だ。
やがて厳かに、結婚式が執り行われる。
「汝、ルノー・ド・ラカーユはベル・コーレイを生涯の妻と定め、病める時も健やかなる時もこの者を助け生涯変わらず愛し続けることを誓いますか?」
「はい、誓います。」
「汝、ベル・コーレイは…」
「…誓いません…」
「ベルさん…?!」
「…私は、このような悪魔と永遠の愛など誓えません!
…私が愛しているのは…生涯ロジェ一人だけです…!」
そういうと、ベルはドレスの下に隠し持った鋭いナイフを自分の胸に深くつき立てた。
地しぶきが上がり、真っ白なドレスはみるみるうちに、真っ赤に染まっていく。
参列客も、そしてあのルノーさえもが悲鳴をあげながら我先にと教会の外へと走りさって行く…
「神父様…大変なことをしてしまって…申し訳…ありません…」
「ベルさん、話さないで!
すぐにお医者様を呼びますから気をしっかり!」
ヴァンヴェールはベルを抱きおこし首元を押さえるが、熱い血は止まることを知らず、どくどくと溢れ続ける。
「神父…様…
どうか…ロジェに…
守ってあげられなくて、ごめんなさい…と…
そして…あなたのことだけを…ずっと、愛していま…した…と…つた…」
力なく差しのべられていた手ががくんと落ちた…
「ベルさん!ベルさんっっ!!」
その様子を長椅子の後ろから震えながら見ていたアンヌがベルに駆け寄る。
「ベル~~っっ!!」
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アンヌとヴァンヴェールはベルの亡骸から血をぬぐい、包帯を巻いて新しい服に着替えさせた。
しばらくすると、ラカーユ家の使用人が訪れ、そんな恥さらしの女はこちらでは引き取るわけにはいかない。
どうとでも好きなように始末するようにと伝えて帰って行った。
「可哀想なベル…
こんなことになるのなら、もっと優しくしてやれば良かった…
ベル…許しておくれよ。
私はあんたに嫉妬してただけなんだよ。」
アンヌは事のすべてをヴァンヴェールに語った。
「…なんと酷い…
何かわけがある事はわかってましたが、まさかそんなことになっていようとは…」
「…ベルは、ロジェさんに手を出されることをとても心配していたようでした。
だからこそ、あんな男のいいなりになっていたのです。
…神父様、お願いです!
ロジェさんにどうかこのことを伝えて下さい。
今までのことをすべて…!」
「わかりました。
私は死ぬ間際のベルさんにも頼まれているのです。
ベルさんの想いをしっかりとロジェさんに伝えてまいりましょう。」
ヴァンヴェールは、ロジェの家に向かった。
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