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the past story

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「…ばかだな…
お前は私の妻ではないか…
金のことなど気にしなくて良いのだ…
ただ、一言こう言えば良い。
 『ルノー様、愛しています。
 私は生涯、あなたの妻として生きて参ります』…とな…」

そういうと、ルノーはおかしくてたまらないといった風に笑いを噛み殺し、肩を震わせている。

それだけは言いたくなかった…
こんな男を「愛している」だなんて…
しかし、このままではルノーの言う通り、母はこのまま死んでしまうかもしれない…
なんとかしなくては…!
 今は、母を救う事が先決だ…ベルは決断する。

「ルノー様…」

これから口にしようとする言葉を考えると、ベルの大きな瞳から大粒の涙が流れ続けた。
でも、言うしかないのだ…

「ルノー様…
私は…私は、あなた様を愛しています。
 私は生涯、あなたの妻として生きて参ります…」

ベルがそう言い終わると、ルノーはひざを叩き大きな腹を抱えて転げまわって笑い始めた。
その狂気じみた笑いがおさまるまで、ベルはまんじりともせず身を硬くしてその場に立ちすくんでいた。
やっと笑いのおさまったルノーは、ベルに近づくといつものいやらしい微笑をうかべた。

 「そうか、そうか。
おまえも昨夜のことで私の良さがわかったのだな。それで良いのだ。
よし、約束通り医者を呼んでやろう。」

そう言うと、外にいる御者に命じ、医者を呼びに行かせた。

 「小1時間もすれば来るだろう。」

 「…ありがとうございました、ルノー様…」

 「お前の部屋はあそこか?」

 「はい。」

ルノーはベルの手首を掴み、ベルの部屋へ行こうとする。

 「ルノー様…?!」

 「ただ待っているのもつまらないだろう…もう1度可愛がってやることにしよう…」

ルノーの唇の端がめくれあがる…
ベルの顔から血の気がひいていった…

「…ル、ルノー様、私は母の看病が…」

そんなことをルノーが聞くはずがなかった…
ベルはまたルノーの欲望のままに弄ばれるのだった…
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