十五の石の物語

ルカ(聖夜月ルカ)

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the past story

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「誰か、誰か助けて~~!!」

半狂乱の女性の声の聞こえる方を見ると、川の中に小さな身体が浮き沈みしながら流されているのが見えた。

 「兄上!あれは…!!」

ヴァンヴェールがレヴィンを見ると、レヴィンはすでにそちらへ向かって走り出している所だった。
ヴァンヴェールもレヴィンに続く。
 何のためらいもなくレヴィンは川岸から川の中へ身を躍らせた。

 「兄上!!」

レヴィンが子供に向かって泳ぐのを見てヴァンヴェールは川下に向かって走り、同じように川に飛び込んだ。
レヴィンは懸命に子供の所へ泳ごうとするが、長い法衣が邪魔をして思い通りに泳ぐことが出来ない。

そんな時、子供の姿が水面から姿を消した。



(…急がなければ…!!)



レヴィンは大きく息を吸い込むと、目をこらし水中にもぐり子供の姿を探す。
 子供の姿は見つからない…
しばらくして苦しくなって水面に戻り、もう一度息を大きく吸い込むと、再び水の中へ戻っていった。

いた……!!
 水中に漂う子供の姿をみつけた!
 長い髪が海草のようにゆらゆらとゆらめいていた。
どうやら、小さな女の子のようだ。

レヴィンは水を掻き少女に近づいていく…
少しずつ…少しずつ…
やっとの思いで少女に辿りついたレヴィンは、少女の腕を掴み、身体を引き寄せ水面へと戻っていく。
 息が苦しい…
意識が薄れそうになりながらも、レヴィンはひたすらに水面を目指した。

 (…神よ、どうぞ幼きこの子をお守り下さい…!)

 「ヴァンヴェール!!」

 「兄上っ!」

レヴィンはなんとか水面に出ることが出来た。

 「……ヴァンヴェール…早く…この子を…!」

 少女をヴァンヴェールに委ねる。

 (……良かった……)

ほっとしたとたんに、レヴィンの身体に激しい疲れが押し寄せてきた。
意識が薄れていく…
レヴィンは手足の感覚がだんだんとなくなっていくのを感じた…

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