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the past story
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ベルが行き着いた場所は教会だった。
教会の中では、ヴァンヴェールとレヴィンが、子供達と一緒に讃美歌を歌っていた。
(なんて美しい歌声なのかしら…
それにレヴィン様の演奏は噂以上の腕前だわ…
なんて素晴らしい…!)
ベルは教会のドアの影で、ひっそりと聴き惚れていた。
「ベルさん!」
「あ…こんにちわ、神父様!」
「どうなさったのですか?
結婚式のことで何か?」
「…いえ…今日は仕事が早くに終わったもので、なんとなく立ち寄ってしまったのです。」
「そうでしたか…それなら、ベルさんもこちらへ来て一緒に歌いませんか?」
「私…歌はうまくないので…」
「そんなことは関係ありませんよ。
さぁ、こちらへ」
2人に促され、ベルはそれから子供達と一緒に讃美歌の合唱を楽しんだ。
皆と声をあわせて歌い、お茶を愉しみ、沈んでいたベルの気持ちも晴れ晴れとしたものになっていた。
(…私ったら、何を大袈裟に考えていたのかしら。
旦那様達にはロジェと結婚することをちゃんとお話してお暇をいただけば良いだけの話じゃないの。
悩むようなことじゃないわ。)
「神父様、今日は本当にどうもありがとうございました。」
「こちらこそ、ありがとうございました。
あなたが来て下さったおかげで、子供達もいつもより楽しんでくれたようです。
…ですが…ベルさん、本当は何か心配事があったのでこちらへ立ち寄られたのではありませんか?」
「いえ…そんなことはありません。
それに…こちらへ伺ったおかげで本当に楽しい気分になれましたから。」
「そうですか…
ならば良いのです。
また、お時間があればいつでも遊びに来て下さい。」
「ありがとうございます。
あの…それから、来月はどうぞよろしくお願いします。」
「本当に楽しみですね。
あなたにはきっと純白のドレスがお似合いでしょうね。」
「…では、失礼します。」
ベルには1つだけ残念なことがあった。
それはウェディングドレスが着れないことだ。
ウェディングドレスの代わりに粗末な生地で白いドレスを縫うつもりだ。
ヴェールもない…
だけど、そんなことはどうでも良い。
大好きなロジェと結婚出来るし、素敵な指輪ももらった、思い描いていたよりもずっとすばらしい家も譲ってもらえることになったのだから…
そう思っていたはずなのに、ウェディングドレスのことを考えるとやはり残念に思ってしまうベルだった。
教会の中では、ヴァンヴェールとレヴィンが、子供達と一緒に讃美歌を歌っていた。
(なんて美しい歌声なのかしら…
それにレヴィン様の演奏は噂以上の腕前だわ…
なんて素晴らしい…!)
ベルは教会のドアの影で、ひっそりと聴き惚れていた。
「ベルさん!」
「あ…こんにちわ、神父様!」
「どうなさったのですか?
結婚式のことで何か?」
「…いえ…今日は仕事が早くに終わったもので、なんとなく立ち寄ってしまったのです。」
「そうでしたか…それなら、ベルさんもこちらへ来て一緒に歌いませんか?」
「私…歌はうまくないので…」
「そんなことは関係ありませんよ。
さぁ、こちらへ」
2人に促され、ベルはそれから子供達と一緒に讃美歌の合唱を楽しんだ。
皆と声をあわせて歌い、お茶を愉しみ、沈んでいたベルの気持ちも晴れ晴れとしたものになっていた。
(…私ったら、何を大袈裟に考えていたのかしら。
旦那様達にはロジェと結婚することをちゃんとお話してお暇をいただけば良いだけの話じゃないの。
悩むようなことじゃないわ。)
「神父様、今日は本当にどうもありがとうございました。」
「こちらこそ、ありがとうございました。
あなたが来て下さったおかげで、子供達もいつもより楽しんでくれたようです。
…ですが…ベルさん、本当は何か心配事があったのでこちらへ立ち寄られたのではありませんか?」
「いえ…そんなことはありません。
それに…こちらへ伺ったおかげで本当に楽しい気分になれましたから。」
「そうですか…
ならば良いのです。
また、お時間があればいつでも遊びに来て下さい。」
「ありがとうございます。
あの…それから、来月はどうぞよろしくお願いします。」
「本当に楽しみですね。
あなたにはきっと純白のドレスがお似合いでしょうね。」
「…では、失礼します。」
ベルには1つだけ残念なことがあった。
それはウェディングドレスが着れないことだ。
ウェディングドレスの代わりに粗末な生地で白いドレスを縫うつもりだ。
ヴェールもない…
だけど、そんなことはどうでも良い。
大好きなロジェと結婚出来るし、素敵な指輪ももらった、思い描いていたよりもずっとすばらしい家も譲ってもらえることになったのだから…
そう思っていたはずなのに、ウェディングドレスのことを考えるとやはり残念に思ってしまうベルだった。
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