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the past story

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「おまえのように幸せな女はいないぞ。
メイド風情のお前がこのラカーユ家の嫁になれるのだからな。
お前の母親もさぞ喜ぶことだろう。
 今日はもう良いから、早く家に帰ってこのことを伝えてやるが良い。」

 「あ、あ、あの…旦那様…私には…」

 「わかっておる。
 婚礼の支度はこちらですべて準備してやるから、安心するが良い。」

 「…あの……」

ベルは、そのまま、追い立てられるように部屋を追い出されてしまった。

(…なんてこと…!
 困ったわ、どうしましょう…
早く、ロジェにこのことを相談しなくては…!)

ベルは早速ロジェの仕事場に行ってみることにした。
ところが、ロジェはアレクサンドル氏の新しい依頼品を造るための材料を買いに、遠くの町まで出掛けたところだという。

 「多分、2~3日はかかると思うぜ。
 急に良いデザインを思い付いたとかで、それにあう石を探して来るってことだったからな。
どうした?
 何か困り事かい?」

 「…いえ…なんでもないんです。
 今日はちょっと早めに仕事を終えたものですから…」

 「そうかい。
そいつは残念だったな。
 寂しいだろうが、なぁに、たった数日のことだ。
 来月からは一緒に暮らせるんだ。
 帰りにゃ、あんたに土産でも買ってきてくれるかもしれないぜ。
 楽しみに待ってな!」

 「そうですね…楽しみにしてますわ。」

ベルは作り笑いを浮かべ、作業場を後にした。

 (…こんな時に…
 …ロジェの馬鹿…!)

ベルはいたたまれない気持ちだった。
 涙がこみあげてくるのをぐっと押さえた。

 (2日や3日で急にどうにかなるなんてことはないわ。
とりあえず、今は落ち着かなければ…)

 自分にそう言い聞かせながら、ベルはあてもなくあたりをぶらぶらしていた。
こんな時間に帰ったら、母がきっと心配する。
だから、家へは帰れない…

(…そうだわ…!)
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