十五の石の物語

ルカ(聖夜月ルカ)

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the past story

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「しかも、たいそう端正な顔立ちをされている。」

 「そうなのよ。お2人を目当てにミサに来てる人達もたくさんいらっしゃるみたいよ。」

 「そうだろうなぁ…もしかしたら、君も密かに憧れてるんじゃないのかい?」

 「お2人はそんなことには興味がなさそうよ。
それに、私には釣り合う人達じゃないわ。
 私にはあなたの方がずっと似合ってる…」

 「…喜んでいいのか、悲しむべきなのか…」

 「素直に喜べば良いのよ。
あの方々は特別…
お2人には敵わなくても、あなたもとても素晴らしい人だもの…
私にとっては一番大切な人ですもの…」

 「ベル…」

 愛し合うベルとロジェは、昔からの幼馴染みだった。
ロジェの両親は、彼がまだ少年の頃、流行り病で相次いで亡くなり、そのため彼はその頃から自立を余儀なくされ飾り職人の道を歩み始めていた。
ベルの父親は、ベルがまだ幼い頃に亡くなり、その後は母親が女手一つで育ててきたのだが、無理が祟ったのか数年前からほとんど寝たきりになってしまっていた。
ベルは母親の薬代と借金のために朝から晩まである貴族の屋敷で働いている。
 綺麗な服を買うこともなく、おいしいものを食べる事もなく、愛するロジェと会うことだけが唯一のベルの楽しみだった。

ロジェは、元々手先が器用だったこともあり、めきめきと腕をあげていった。
 先日はついにある貴族からの注文品を手掛けることにまでなった。
もうすぐ一人立ち出来るようになるはずだ。
そうすれば、金銭的にも楽になってくるだろう。
 2人はそう遠くない時期に結婚し、今よりも少し大きな家を借りて、ベルの母親と3人で暮らすことを計画していた。

 「もうそろそろ戻らないと…」

 「そうだね…じゃ、また今夜…」

 「えぇ…愛してるわ、ロジェ」

 「僕もだよ、ベル…」

 手を振りながら駆けていくベルを見送り、ロジェは仕事場へ戻った。

 「おぅ、早かったな。もっとゆっくりしてくりゃ良かったのに。」

ロジェの親代わりとも言える親方が人懐っこい笑顔でロジェを迎えてくれた。
ロジェもそんな親方に笑顔で微笑み返す。
そんな時、ふと作業大の隅に置かれたムーンストーンに気がついた。

 「親方!その石は…?」

 「あぁ、これか?
どうだい?
 良い石だろう?
 男爵様の娘さんの誕生日プレゼント用にムーンストーンが良いとおっしゃるから探してきたんだがよ、こんな小さい石じゃだめなんだとよ。
そんなドデカイ石よりもこの位の方が女の指には似合うのになぁ…
金持ちって奴はなんでもでかけりゃ良いと思ってやがるんだな。」
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