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the past story

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「今日もまた来て下さったようだな。」

レヴィンは、白い百合を眺めながら、目を細め嬉しそうな微笑みを浮かべていた。
 教会には甘美な白百合の香りが広がっていた。

 「私達がいる時にいらして下されば良いのに…」

 「…そういう所がまたソフィーさんの良い所ではないかな。」

レヴィンは白い百合を今一度愛しそうに眺めると、ヴァンヴェールの方に向き直り、にっこりと微笑んだ。

 「そろそろ出かけようか…」

 「そうですね、兄上…」

 「あら、レヴィン様とヴァンヴェール様だわ…」

 「あの方々が…」

 「そうよ。とてもお優しくて聡明な神父様だと評判よ…
お兄様のレヴィン様はパイプオルガンの名手でもいらっしゃるそうよ。
 弟君のヴァンヴェール様はとても歌がお上手らしいわ。
 私達の結婚式にはぜひレヴィン様に演奏をお願いしたいわね。」

 「そうだね、ぜひお願いしてみようよ。
しかし、ご兄弟揃って音楽の才能に恵まれているということは、ご両親のどちらかが才能のある方なのかもしれないね。」

 「あら、ロジェ…知らないの?」

 「知らないって、何を…?」

 「レヴィン様とヴァンヴェール様は、血の繋がったご兄弟ではないのよ。」

 「本当かい!?
でも、お2人ともとてもよく似ていらっしゃるように見えるが…」

 「ヴァンヴェール様は、まだ赤ん坊の時にレヴィン様のお屋敷の前に捨てられていたそうよ。
それをレヴィン様のご両親が引き取られて育てられたんだそうなのよ。」

 「そうなんだ…そんなこと、少しも知らなかったよ。
そういえば、お屋敷って…?
レヴィン様のお父上は神父様ではなかったのかい?」

 「ロジェ…あなた本当に何も知らないのね。
レヴィン様は元々このあたりの領主様の息子さんなのよ。
でも、レヴィン様がどうしても神父様になりたいと決意されて家を出られたそうよ。
レヴィン様はヴァンヴェール様に家を継いでもらおうと考えられたようだけど、そのヴァンヴェール様までもがレヴィン様と同じく神父様になられてしまったの。」

 「そんな所まであの2人はそっくりなんだね。
やっぱり本当の兄弟みたいじゃないか。
しかし、ベル…君は本当にいろんなことをよく知ってるんだね。」

 「女は噂話には敏感なのよ。
ついでに教えといてあげるとね、レヴィン様のお家はレヴィン様の遠縁にあたる方が継ぐことになってるのだそうよ。」

 「そうか…
それなら心配はないのだろうが、ご両親はお2人が神父様になることをよくお許しになったものだね。」

 「もちろん、諸手を挙げて賛成されたわけではないでしょうけど、お2人の熱意と決意がそれほど強かったということではないかしら…
本当にあのお2人は心の正しくて清い方々なのよ…
お年寄りのお話し相手をされたり、孤児院で子供達にお話をされたり演奏を聞かせたり、病人のお世話もされてるらしいわ。
お2人は暇さえあれば、そうやって皆の支えになられているのよ。
まだお若いのに、本当にご立派だわ。」
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