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 「……サリーさん…
私は今から西の森にネリーさんを連れていってきます。
レヴさんのことをどうぞよろしくお願いします。」

 「……ヴェール…大丈夫かい?」

ヴェールはサリーに向かって力なく微笑み、小さく頷く。
そして、まだ夜が明けきらないうちに、ネリーを荷車に乗せ西の森へ旅立った。
それほど重くもない荷車に載っているのは、ヴェールにとっては、この世でただ一人の血を分けた肉親……
ほんの束の間の再会だった。
だが、たとえどれほど短い間でも会えて良かったと、ヴェールは思った。
ネリーに会えたことで、自分の中には彼女の血と不思議な力が脈々と受け継がれている……
そのことを強く実感出来るようになったのだから……

(……私はひとりぼっちなんかじゃない。)



 *



 夜が明けた頃から、レヴの熱が徐々に下がり始め、苦しそうな息遣いが静かな寝息に変わっていった。



 (……レヴ…良かったね…
あんた、助かったんだよ。
ネリーのおかげで助かったんだよ……)

サリーは溢れ出るそっと涙を拭った。



 「おはようございます、サリーさん。」

 「……あ…ジネット!
レヴの熱がやっと下がったんだよ。
もう大丈夫さ。」

 「まぁ……!!
……本当に良かった…
レヴさんの身になにかあったらどうしようかと、私……」

ジネットは一目でレヴの容態が回復してきていることに気付き、安堵感に瞳を潤ませた。



 「すまなかったね…
長い間、あんたには面倒をかけて、心細い思いもさせてしまったね。」

 「いえ…そんなこと……
 ……でも、レヴさんが良くなられて本当に良かったですわ。
ところで……ヴェールさんとあのお医者様は?」

 「……あぁ…
ヴェールは…ヴェールは、お医者様を町まで送って行ったんだ。
ちょっと遠い町だから、しばらくかかると思うけど……」

 「一晩で治してしまわれるとは、たいした名医様なのですね…!
 遠くまで探しに行かれた甲斐がありましたね。」

 「そうさ……
あんな、名医、他にはいないよ……」

 「サリーさん…?」

 涙を流すサリーを訝しく思いながらも、ジネットはとても落ち着いた気分を感じていた。



 (……本当に良かった!
もうこれで大丈夫なのね…!)

 
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