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「……あ…あぁ……」
それを見たサリーはほっとしてその場にがっくりと膝を着く。
「……これで……これでもう大丈夫なんだね……
レヴは助かったんだね……」
サリーは潤んだ瞳でネリーをみつめた。
ネリーはそれに対して小さく頭を振る。
「いいえ、まだ安心は出来ません。
この石はレヴさんの手を離れたに過ぎないのです。」
「そんな……!」
「私は、今からこの石と心を通じさせてみます。
どうか、私が良いというまでは決して中へは入って来ないで下さい。」
そう言うと、ネリーは指輪を持って、一人、隣の部屋に閉じ籠る。
ネリーの言葉通り、指輪がはずれても、レヴの様子は先程と変わらず苦しそうなままで意識も戻らない。
「レヴ、しっかりするんだよ!
ネリーが必ずあんたを助けてくれるから、頑張るんだよ!」
「レヴさん、しっかり!!」
意識の戻らないレヴの手を握り締め、サリーとヴェールは懸命に語りかけた。
レヴが違う世界に行ってしまうのを引き止めるように……
隣の部屋からは時折低いうなり声のようなものが聞こえる。
気にはなりながらも、ネリーの言いつけを守り二人はネリーが部屋から出て来るのをじっと待った。
しばらくすると、隣の部屋から何かが倒れるような大きな音が聞こえた。
「ヴェール…今の音……」
ヴェールは立ち上がり、扉の前からネリーに声をかける。
「ネリーさん…今、大きな音がしたようですが大丈夫ですか?」
部屋の中から返事はなかった。
「ネリーさん…?」
「……ヴェール……返事がないけど、ネリーは大丈夫かな?」
返事がないのを訝しく感じ、ヴェールが部屋に入ってみると、椅子の傍らにネリーが倒れていた。
「ネリーさん!ネリーさん!」
ヴェールがネリーを抱き抱えると、ネリーはうっすらと瞳を開けたがまたすぐにその瞳は閉じられた。
「サリーさん!水を!」
唇からわずかずつ水を注ぎ込むと、ネリーはようやく意識を取り戻した。
「……ありがとう…もう大丈夫です。
この石のことは、だいたいわかりました……」
小さな声でそう言ったネリーの顔は、ほんの少しの間にまるで別人のようにやつれていた。
それを見たサリーはほっとしてその場にがっくりと膝を着く。
「……これで……これでもう大丈夫なんだね……
レヴは助かったんだね……」
サリーは潤んだ瞳でネリーをみつめた。
ネリーはそれに対して小さく頭を振る。
「いいえ、まだ安心は出来ません。
この石はレヴさんの手を離れたに過ぎないのです。」
「そんな……!」
「私は、今からこの石と心を通じさせてみます。
どうか、私が良いというまでは決して中へは入って来ないで下さい。」
そう言うと、ネリーは指輪を持って、一人、隣の部屋に閉じ籠る。
ネリーの言葉通り、指輪がはずれても、レヴの様子は先程と変わらず苦しそうなままで意識も戻らない。
「レヴ、しっかりするんだよ!
ネリーが必ずあんたを助けてくれるから、頑張るんだよ!」
「レヴさん、しっかり!!」
意識の戻らないレヴの手を握り締め、サリーとヴェールは懸命に語りかけた。
レヴが違う世界に行ってしまうのを引き止めるように……
隣の部屋からは時折低いうなり声のようなものが聞こえる。
気にはなりながらも、ネリーの言いつけを守り二人はネリーが部屋から出て来るのをじっと待った。
しばらくすると、隣の部屋から何かが倒れるような大きな音が聞こえた。
「ヴェール…今の音……」
ヴェールは立ち上がり、扉の前からネリーに声をかける。
「ネリーさん…今、大きな音がしたようですが大丈夫ですか?」
部屋の中から返事はなかった。
「ネリーさん…?」
「……ヴェール……返事がないけど、ネリーは大丈夫かな?」
返事がないのを訝しく感じ、ヴェールが部屋に入ってみると、椅子の傍らにネリーが倒れていた。
「ネリーさん!ネリーさん!」
ヴェールがネリーを抱き抱えると、ネリーはうっすらと瞳を開けたがまたすぐにその瞳は閉じられた。
「サリーさん!水を!」
唇からわずかずつ水を注ぎ込むと、ネリーはようやく意識を取り戻した。
「……ありがとう…もう大丈夫です。
この石のことは、だいたいわかりました……」
小さな声でそう言ったネリーの顔は、ほんの少しの間にまるで別人のようにやつれていた。
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