上 下
392 / 449
another story

25

しおりを挟む
「私がそばにいてあげられたら…少しは何か出来たかもしれないのに……」

 今夜は一人にしておいてほしいと言うネリーに、心配ではあったがヴェールとサリーは素直にその言葉に従った。



 (……お可哀想に…
あのまま、何も思い出さなければ、ネリーさんもあんなに傷付かれることはなかったのに……)

ネリーの心情を思うと、ヴェールは溢れ出す涙を止められなかった。



 *



 次の朝、ネリーの瞼は腫れ、瞳は赤くなってはいたが、気丈にも明るく振舞った。



 「早く、レヴさんの所へ行かなければ…!
 今日も頑張っていきましょうね!」

しかし、その言葉とは裏腹に、昨日と比べ、ネリーの足取りはずっと重かった。
 昨日の道程の半分程しか進めなかったが、森の民は人間よりもずっと心が傷つきやすく、心の傷だけで死んでしまうことも少なくないということ知っていたから、無理はさせられない。
レヴのことは気になるが、ここでネリーに何事かあったら元も子もなくなってしまうのだ。

サリーとヴェールは焦る気持ちを押さえながら、ネリーに気遣い、慎重に旅を続けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

宝石少年の旅記録(25日更新)

小枝 唯
ファンタジー
 ビジュエラという、とても美しい世界があった。澄んだ水は太陽の光が無くとも星の様に煌き、それを栄養とした自然もまた美しい。  人間は魅了されたあまり、やがてそれを加工して装飾などに使い始める。それを人は『宝石』と呼んだ。  そんな世界に1人、宝石となる奴隷が居た。幼い奴隷は1つの『死』を経験し、運命の旅人となる。  これは地図の無い白紙の世界に色を付けた、旅人の記録。盲目な彼が記す、様々な国とそこに住む人々の話。 ~ ** ~ ** ~ 毎週月曜20:00更新!

宝石店勤務のOLで疎まれなが生活してましたが異世界で幸せになります!

麻麻(あさあさ)
恋愛
街一番の宝石店の看板娘のエメの前世は宝石大好き!だがそれ故にモテないまま生涯を閉じたOL。 キラキラの宝石を身に纏う来世に期待したが転生した今はそれも無理だと諦めたが(前世よりは前世の知識もあり鑑定やデザインもでき)良い転生ライフを送れていたはずだったが城から使いが来て「姫の結婚式につけるティアラの宝石がなくなったから石が何か当てて!」と鑑定依頼されて住み込みで仕事をする事に。 しかも、モルクルのイジワル?な執事長を側につけられて不安な気持ちで仕事を開始するが、果たしてエメは今度こそ幸せになれるのか?

西からきた少年について

ねころびた
ファンタジー
西から来た少年は、親切な大人たちと旅をする。

転生して異世界の第7王子に生まれ変わったが、魔力が0で無能者と言われ、僻地に追放されたので自由に生きる。

黒ハット
ファンタジー
ヤクザだった大宅宗一35歳は死んで記憶を持ったまま異世界の第7王子に転生する。魔力が0で魔法を使えないので、無能者と言われて王族の籍を抜かれ僻地の領主に追放される。魔法を使える事が分かって2回目の人生は前世の知識と魔法を使って領地を発展させながら自由に生きるつもりだったが、波乱万丈の人生を送る事になる

糸と蜘蛛

犬若丸
ファンタジー
瑠璃が見る夢はいつも同じ。地獄の風景であった。それを除けば彼女は一般的な女子高生だった。 止まない雨が続くある日のこと、誤って階段から落ちた瑠璃。目が覚めると夢で見ていた地獄に立っていた。 男は独り地獄を彷徨っていた。その男に記憶はなく、名前も自分が誰なのかさえ覚えていなかった。鬼から逃げる日々を繰り返すある日のこと、男は地獄に落ちた瑠璃と出会う。 地獄に落ちた女子高生と地獄に住む男、生と死の境界線が交差し、止まっていた時間が再び動き出す。 「カクヨム」にも投稿してます。

異世界二度目のおっさん、どう考えても高校生勇者より強い

八神 凪
ファンタジー
   旧題:久しぶりに異世界召喚に巻き込まれたおっさんの俺は、どう考えても一緒に召喚された勇者候補よりも強い  【第二回ファンタジーカップ大賞 編集部賞受賞! 書籍化します!】  高柳 陸はどこにでもいるサラリーマン。    満員電車に揺られて上司にどやされ、取引先には愛想笑い。  彼女も居ないごく普通の男である。  そんな彼が定時で帰宅しているある日、どこかの飲み屋で一杯飲むかと考えていた。  繁華街へ繰り出す陸。  まだ時間が早いので学生が賑わっているなと懐かしさに目を細めている時、それは起きた。  陸の前を歩いていた男女の高校生の足元に紫色の魔法陣が出現した。  まずい、と思ったが少し足が入っていた陸は魔法陣に吸い込まれるように引きずられていく。  魔法陣の中心で困惑する男女の高校生と陸。そして眼鏡をかけた女子高生が中心へ近づいた瞬間、目の前が真っ白に包まれる。  次に目が覚めた時、男女の高校生と眼鏡の女子高生、そして陸の目の前には中世のお姫様のような恰好をした女性が両手を組んで声を上げる。  「異世界の勇者様、どうかこの国を助けてください」と。  困惑する高校生に自分はこの国の姫でここが剣と魔法の世界であること、魔王と呼ばれる存在が世界を闇に包もうとしていて隣国がそれに乗じて我が国に攻めてこようとしていると説明をする。    元の世界に戻る方法は魔王を倒すしかないといい、高校生二人は渋々了承。  なにがなんだか分からない眼鏡の女子高生と陸を見た姫はにこやかに口を開く。  『あなた達はなんですか? 自分が召喚したのは二人だけなのに』  そう言い放つと城から追い出そうとする姫。    そこで男女の高校生は残った女生徒は幼馴染だと言い、自分と一緒に行こうと提案。  残された陸は慣れた感じで城を出て行くことに決めた。  「さて、久しぶりの異世界だが……前と違う世界みたいだな」  陸はしがないただのサラリーマン。  しかしその実態は過去に異世界へ旅立ったことのある経歴を持つ男だった。  今度も魔王がいるのかとため息を吐きながら、陸は以前手に入れた力を駆使し異世界へと足を踏み出す――

処理中です...