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「……そんなことがあったのですか…
だから、あなたはもうあの暗き森にはいらっしゃなかったのですね。」

 「暗き森に行かれたのですか!?」

 「昨日も申しました通り、私達はずっとあなたを探していたのです。
 実は、私の娘があなたを探しに外の世界に行っているのです。」

 「あなたの娘さんが…!
それで、娘さんは今どこに?」

ディサは俯き、頭を振った。



 「今、あの子がどこにいるかは…私にもわかりません。
でも、きっとあの子は自分の使命を果たすため、今も懸命にあなたを探していると思うのです。」

 「そんな…ヴェールはもうここにいるのに…
なんとか娘さんと連絡をとる方法はないの?」

 「残念ながらありません…」

 「では、娘さんは…」

 「おそらく、あの子はあなたに会えるまではここには戻ってこないと思います。
しかし、それよりも……」

 「それよりも…?」

 「あの子は、大切なものを持っているのです。」

 「大切なものって?」

 「ヴェール様、お護り石のことはご存じですか?」

 「えぇ、知ってます。」

そういうと、ヴェールは部屋から小箱を持って戻った。



 「これは南の村でみつけたものですが、母のものではないでしょうか?」

 「その通りです。これは、オルガ様の護り石…
オルガ様はこんな大事なものさえも、持って行かれなかったのですね…」

 「石を見ただけで誰のものかわかるのですか?」

ディサはゆっくりと頷く。



 「不思議に思われるかもしれませんが、この石は我が子の無事と幸せを祈り、親がその子の波動に一番あう石をみつけてくるものなのです。
そして、子供はその石をずっと大切にして成長します。
 石には持ち主の思いや、送り主の思い、いろんなものがぎっしりと詰まっています。
ですから、私達はその思いから誰のものなのか感じることが出来るのです。」

 「そうなのですか…」

 「あなたも森の民…きっとすぐにわかるようになりますわ。
 私の娘は、あなた様にお渡しするべき大切なお護り石を持っているのです。」

 「私の護り石を?」

 「そうです。
オルガ様に代わり、イルヤナ様があなたのために採って来られたスタウロライトを、娘は持っているのです。」

 「スタウロライト?
この石はキャストライトではないのですか?」

 初めて聞いた石の名前にヴェールとサリーは小首を傾げる。



 「そうです、これはキャストライト。
 女性の護り石です。」

 「男性と女性では護り石が違うのですか?!」

 「ご存じなかったのですか?」

 驚くヴェールに、ディサはさらに驚いたような表情を浮かべた。 
 
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