十五の石の物語

ルカ(聖夜月ルカ)

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「……そういえば、今、母は男手一つで育てられた…と…?」

 「その通りです…
オルガ様のお母上はオルガ様がまだお小さい時分にお亡くなりになられたと聞いております。」

 「……そんな……」

 祖父だけではなかった…
祖母も、もうすでにこの世にはいなかったのだ。



 (……やはり、私はひとりぼっちだったのか…)

ヴェールの瞳から、一粒の涙がこぼれ落ちた。



 「……ヴェール様…?」

 「すみません。なんでもありません。」

 「大丈夫ですか?
 今夜はもう遅くなりましたし、どうぞお屋敷の方でお休み下さい。」



ディサは、ヴェールとサリーを屋敷に案内した。
 他の村と同じく、その屋敷はやはり村の最奥にあった。
 造りもまた他の屋敷と酷似していた。



 「ごゆっくりお休み下さい。
また明日、お迎えに参ります。」



 寝室にはふかふかのベッドが用意されていた。
いつ、長が帰ってきても良いように常に陽に干してあったのだろう。
 暖かな太陽の匂いがした。
そんな気持ちの良いベッドを用意されても、いろんなことがありすぎて、ヴェールはとても眠れそうになかった。
サリーと話そうかとも思ったが、彼女はもう眠っているかもしれない。
そう思い、部屋を訪ねることはやめた。

ふかふかのベッドの中で、ヴェールは眠れない夜を過ごした。
ようやく森の民をみつけた喜び…しかし、一番会いたかった祖父母はすでに亡く、気がかりなレヴの容態……ヴェールの頭の中を様々なことが浮かんでは消える。



 (しっかりしなくては…!
まず、明日はレヴさんのことを相談しよう。)



 次の朝、心地好い小鳥のさえずりでヴェールは目を覚ました。
 朝方、ほんの少し眠っただけだったが、興奮のためかヴェールは眠気を感じなかった。

 顔を洗い寝室を出ると、ヨンネが部屋の前で待ち構えていたかのように、ヴェールを食卓へ案内する。

そこでは、サリーが楽しそうに笑いながら、朝食を食べていた。



 「ヴェール、遅いよ!」

 「おはようございます。
 今日はすっかり寝坊をしてしまいました。」

 「おはようございます。
ヴェール様も人間の食べ物を食べられるとお聞きしましたので、こちらにご用意しておきました。」

そう言ったのは昨夜会ったユスカだった。

 食事を済ませた後、森の民達にヴェールの帰還を知らせたいと言われたが、ヴェールはその前に彼等に話さなければならないことがあると断った。



 「実は、私がこうしてここへ来れたのも、ここにいるサリーさんとレヴさんという方のおかげなのです。」

ヴェールは、今までのことを三人に話し始めた。 
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