上 下
310 / 449
13、薔薇輝石(結ぶ愛)ロードナイト

28

しおりを挟む




 (あ…そうだ…!これだ…!)


その晩、遅くにサリーは宿を抜け出し、愛の洞窟を訪れた。



 (…良かった…
さすがに、こんな時間には誰も来てないや…)

サリーは洞窟の中に入り、そしてまたそっとロードナイトに触れる。

この石を見ると、サリーは無意識に手を伸ばしたくなり、触れるとなんともいえない懐かしい気持ちに浸れるのを感じていた。



 (……優しい…
この石は、とても優しいよ…)

サリーの胸は自分でもよくわからないままに熱くなり、溢れる感情は涙となって流れ出す。
それは、まるで湧き出る泉のように、止めどない。
 誰もいないから気にしなくて良いという安心感のためか、サリーは流れる涙を拭おうともせず、素直な気持ちに身を任せた。
 何か…遠い記憶の断片がよみがえってくるような…
サリーはそんな不思議な感覚を感じた。
だが…それは明確な形では現れない。



 (……何なんだろう?この気持ち…)

それは、サリー本人にも理解出来ないぼんやりとしたものだった。

ひとしきり涙を流し、妙にすっきりとした気分を感じたサリーは涙を拭い、そして、ロードナイトに向かって心からの祈りを捧げた。



 (どうか、魔石が悪さをしませんように…!
あたしが出来ることならなんでもしますから、どうかレヴの身に悪いことが起こりませんように…!) 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

武装魔術戦争~融奏のフリーディア~

めぐりん
ファンタジー
 自分が何をしたいのか? どう在りたいのか? 何を為すべきなのか? そんな葛藤を胸にユーリ・クロイスは中等部卒業後、フリーディア統合連盟軍に入隊する。  この世界には、異種族と呼ばれる生物が存在し、その異種族の侵略から人々を守るためにフリーディア統合連盟軍は存在している。進路について母親と喧嘩して家を飛び出したユーリだが、初めて戦場に赴き、自分が今まで何も知らずに安穏とした日常を送っていたことを痛感する。それと同時にこれまで当たり前だと思ってきたことに対する疑問も同時に浮かび上がる。  そもそも異種族とは何だ? 何故彼らと戦争をする必要があるのか? この世界の在り方は本当に正しいのか?  これは、ユーリ・クロイスという一人の少年を起点に、様々な登場人物たちの想いが交錯し、世界に大きな変革を齎していく物語。 『悲劇に満ちた残酷なこの世界で、今度こそ完全無欠の大円団を目指して――』

異世界二度目のおっさん、どう考えても高校生勇者より強い

八神 凪
ファンタジー
   旧題:久しぶりに異世界召喚に巻き込まれたおっさんの俺は、どう考えても一緒に召喚された勇者候補よりも強い  【第二回ファンタジーカップ大賞 編集部賞受賞! 書籍化します!】  高柳 陸はどこにでもいるサラリーマン。    満員電車に揺られて上司にどやされ、取引先には愛想笑い。  彼女も居ないごく普通の男である。  そんな彼が定時で帰宅しているある日、どこかの飲み屋で一杯飲むかと考えていた。  繁華街へ繰り出す陸。  まだ時間が早いので学生が賑わっているなと懐かしさに目を細めている時、それは起きた。  陸の前を歩いていた男女の高校生の足元に紫色の魔法陣が出現した。  まずい、と思ったが少し足が入っていた陸は魔法陣に吸い込まれるように引きずられていく。  魔法陣の中心で困惑する男女の高校生と陸。そして眼鏡をかけた女子高生が中心へ近づいた瞬間、目の前が真っ白に包まれる。  次に目が覚めた時、男女の高校生と眼鏡の女子高生、そして陸の目の前には中世のお姫様のような恰好をした女性が両手を組んで声を上げる。  「異世界の勇者様、どうかこの国を助けてください」と。  困惑する高校生に自分はこの国の姫でここが剣と魔法の世界であること、魔王と呼ばれる存在が世界を闇に包もうとしていて隣国がそれに乗じて我が国に攻めてこようとしていると説明をする。    元の世界に戻る方法は魔王を倒すしかないといい、高校生二人は渋々了承。  なにがなんだか分からない眼鏡の女子高生と陸を見た姫はにこやかに口を開く。  『あなた達はなんですか? 自分が召喚したのは二人だけなのに』  そう言い放つと城から追い出そうとする姫。    そこで男女の高校生は残った女生徒は幼馴染だと言い、自分と一緒に行こうと提案。  残された陸は慣れた感じで城を出て行くことに決めた。  「さて、久しぶりの異世界だが……前と違う世界みたいだな」  陸はしがないただのサラリーマン。  しかしその実態は過去に異世界へ旅立ったことのある経歴を持つ男だった。  今度も魔王がいるのかとため息を吐きながら、陸は以前手に入れた力を駆使し異世界へと足を踏み出す――

田舎貴族の学園無双~普通にしてるだけなのに、次々と慕われることに~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
田舎貴族であるユウマ-バルムンクは、十五歳を迎え王都にある貴族学校に通うことになった。 最強の師匠達に鍛えられ、田舎から出てきた彼は知らない。 自分の力が、王都にいる同世代の中で抜きん出ていることを。 そして、その価値観がずれているということも。 これは自分にとって普通の行動をしているのに、いつの間にかモテモテになったり、次々と降りかかる問題を平和?的に解決していく少年の学園無双物語である。 ※ 極端なざまぁや寝取られはなしてす。 基本ほのぼのやラブコメ、時に戦闘などをします。

【完結】ミックス・ブラッド ~異種族間混血児は魔力が多すぎる~

久悟
ファンタジー
 人族が生まれる遙か昔、この大陸ではある四つの種族が戦を繰り返していた。  各種族を統べる四人の王。 『鬼王』『仙王』『魔王』『龍王』 『始祖四王』と呼ばれた彼らが互いに睨み合い、この世の均衡が保たれていた。    ユーゴ・グランディールはこの始祖四王の物語が大好きだった。毎晩母親に読み聞かせてもらい、想いを膨らませた。  ユーゴは五歳で母親を亡くし、父親は失踪。  父親の置き手紙で、自分は『ミックス・ブラッド』である事を知る。  異種族間に産まれた子供、ミックス・ブラッド。  ある者は種族に壊滅的な被害をもたらし、ある者は兵器として生み出された存在。  自分がそんな希少な存在であると告げられたユーゴは、父親から受け継いだ刀を手に、置き手紙に書かれた島を目指し二人の仲間と旅に出る。  その島で剣技や術を師匠に学び、様々な技を吸収しどんどん強くなる三人。  仲間たちの悲しい過去や、告白。語られない世界の歴史と、種族間の争い。  各種族の血が複雑に混じり合い、世界を巻き込む争いへと発展する。  お伽噺だと思っていた『始祖四王』の物語が動き出す。  剣技、魔法、術の数々。異世界が舞台の冒険ファンタジー。

光のもとで1

葉野りるは
青春
一年間の療養期間を経て、新たに高校へ通いだした翠葉。 小さいころから学校を休みがちだった翠葉は人と話すことが苦手。 自分の身体にコンプレックスを抱え、人に迷惑をかけることを恐れ、人の中に踏み込んでいくことができない。 そんな翠葉が、一歩一歩ゆっくりと歩きだす。 初めて心から信頼できる友達に出逢い、初めての恋をする―― (全15章の長編小説(挿絵あり)。恋愛風味は第三章から出てきます) 10万文字を1冊として、文庫本40冊ほどの長さです。

人生負け組のスローライフ

雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした! 俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!! ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。 じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。  ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。 ―――――――――――――――――――――― 第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました! 皆様の応援ありがとうございます! ――――――――――――――――――――――

異界娘に恋をしたら運命が変わった男の話〜不幸の吹き溜り、薄幸の美姫と言われていた俺が、英雄と呼ばれ、幸運の女神と結ばれて幸せを掴むまで〜

春紫苑
恋愛
運命の瞬間は早朝。 泉から伸びる手に触れたことが、レイシールの未来を大きく変えた。 引き上げられた少女は、自らを異界人であると告げ、もう帰れないのかと涙をこぼした。 彼女を還してやるために、二人は共に暮らすこととなり……。 領主代行を務めるレイシールの、目下の課題は、治水。毎年暴れる河をどうにかせねば、領地の運営が危うい。 だが、彼の抱える問題はそれだけではない。 妾腹という出自が、レイシールの人生をひどく歪なものにしていた。 喪失の過去。嵐中の彼方にある未来。二人は選んだ道の先に何を得るのか!

誕生石の小物

三枝七星
ファンタジー
誕生石をモチーフにしたファンタジーアイテムのSS集です。 似たような作品群(https://www.alphapolis.co.jp/novel/519967146/971834185) (※リアルの社会情勢を反映しておりません) (※職業についての考察は詳細に行なっておりません) (※現実的な法律、道徳、倫理、人権、衛生の面で「誤り」「加害的」「差別的」であることも描写されますが、これらを「是」とするものではありません) (※随時修正する可能性はあります) 参考・引用文献 有名石から超希少石まで美しい写真でよくわかる宝石図鑑(KARATZ・小山慶一郎/日本文芸社/2023年) 世界観設定のための宝石図鑑(飯田孝一/エクスナレッジ/2022年) 守護石パワーストーン組み合わせ&相性大辞典(登石麻恭子・須田布由香・玉井宏/河出書房新社/2021年)

処理中です...