十五の石の物語

ルカ(聖夜月ルカ)

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13、薔薇輝石(結ぶ愛)ロードナイト

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 私はこれといったあてもなく、ぶらぶらと町を歩いていた。



 (これまであわただしく旅をしてきたせいか、急にゆとりが出来ると却って困るものだな…)

 大きな町ならともかく、この町には娯楽施設と呼べるようなものもない。

そんな時、私の目にある一軒の店が映った。
 私はそこに引き寄せられるように近寄って行った。



 「いらっしゃいませ!」

 扉を開けると、気持ちの良い笑顔を讃えた女性が出迎えてくれた。



 「いらっしゃいませ。
 今日は何をお探しでしょうか?」

 私は店内を見回した。
そして、ある一点の商品の前で目を停めた。



 「すみませんが、あれを…」

 「はい。これでございますね。」

 店員が差し出したのは、薄いピンクにコスモスに似た可憐な花びらが描かれた生地だった。



 「奥様へのプレゼントですか?」

 「いえ…あの……妹です。」

 「それは失礼しました。
で、どのようなものをお作りいたしましょうか?」

 「私は男だから、どういうものが良いのかよくはわからない。
 22~3の娘に似合うものに仕立てていただきたいのですが……」

 「採寸しなくて大丈夫ですか?」

 「体格は幸いにもちょうどあなたと同じくらいだ。
 背はあなたよりほんの少し高い。」

 「難しい注文ですね!
でも、却って作りがいがありますわ。
この生地でしたら、女性らしいデザインの方が良さそうですね。」

 「そうですね。
なにしろ気の強いはねっかえりなものですから、少しでも女性らしく見えるデザインでよろしくお願いします。」

 「わかりました。
 一週間程かかると思いますがよろしいですか?」

 「ええ、よろしくお願いします。」

 突然の思い付きで、私はサリーの服の仕立てを頼んだのだ。



 (……まぁ、良い…
もしかしたら、旅が終わった頃には私の身に何かがあるかもしれないのだから…
いや、旅が終わる前かもしれない…
そもそも、何をもって旅の終わりというのか…?)

そんなことを考えると、私はまた気分が滅入ってくるのを感じた。

 
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