上 下
228 / 449
10、蛍石(秘密の恋)フローライト

28

しおりを挟む
「おぉ~っ!これはまた綺麗な石じゃのう!」

フランツは、手にした石を長め、にこやかな笑みを浮かべた。



 「そうだろ?
 太陽に当てると光るんだよ。
 『蛍石』って言うんだってさ。
 蛍なのに太陽に反応するなんて、なんかおかしいよね。」

 「あの…レヴさんは地質学の学者様なのですか?」

ジネットがおずおずと私への質問を口にした。



 「え?!あ…あ…それはですね…」

まさかそんなことを訊かれるとは思っていなかったため、私はしどろもどろになり、何と答えるかを考え酷く焦ってしまった。



 「そうなんだよ。
こう見えてもこのお兄さんは学者様なんだよ。
しかも、あたしとは腹違いの兄妹でね。
それだけじゃないよ。
ヴェールもわけありの兄弟なのさ。」

サリーが、適当なことを答えてくれたので、私は曖昧な笑みを浮かべて誤魔化した。
 漠然と、伝承の研究をしている学者だ等と考えていたが、石ばかり探していると、地質学と思われても当然だ。



 「そうだったのですか!
そういえば、レヴさんとヴェールさんはどことなく似てらっしゃる……」

 「どうせ、あたしだけ似てないけどね。」

 「いえ、そういうわけでは…」

ジネットはあわてて頭を振ったが、サリーの機嫌はそう簡単には直らなかった。



 「良いんだよ。兄弟も三人もいれば、一人位変なのが生まれるんだよ、ねぇ、義兄さん!」

サリーのあからさまな皮肉のおかげで、その場の雰囲気はすっかり悪いものに変わった。
 相変わらず感情的な彼女に、私は思わず溜め息を漏らしてしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

稀代の大賢者は0歳児から暗躍する〜公爵家のご令息は運命に抵抗する〜

撫羽
ファンタジー
ある邸で秘密の会議が開かれていた。 そこに出席している3歳児、王弟殿下の一人息子。実は前世を覚えていた。しかもやり直しの生だった!? どうしてちびっ子が秘密の会議に出席するような事になっているのか? 何があったのか? それは生後半年の頃に遡る。 『ばぶぁッ!』と元気な声で目覚めた赤ん坊。 おかしいぞ。確かに俺は刺されて死んだ筈だ。 なのに、目が覚めたら見覚えのある部屋だった。両親が心配そうに見ている。 しかも若い。え? どうなってんだ? 体を起こすと、嫌でも目に入る自分のポヨンとした赤ちゃん体型。マジかよ!? 神がいるなら、0歳児スタートはやめてほしかった。 何故だか分からないけど、人生をやり直す事になった。実は将来、大賢者に選ばれ魔族討伐に出る筈だ。だが、それは避けないといけない。 何故ならそこで、俺は殺されたからだ。 ならば、大賢者に選ばれなければいいじゃん!と、小さな使い魔と一緒に奮闘する。 でも、それなら魔族の問題はどうするんだ? それも解決してやろうではないか! 小さな胸を張って、根拠もないのに自信満々だ。 今回は初めての0歳児スタートです。 小さな賢者が自分の家族と、大好きな婚約者を守る為に奮闘します。 今度こそ、殺されずに生き残れるのか!? とは言うものの、全然ハードな内容ではありません。 今回も癒しをお届けできればと思います。

BYOND A WORLD

四葉八朔
ファンタジー
第1章、87話(48万文字程度)5月5日まで毎日19:00連続更新です。 地球とは違う異世界。まったく見知らぬ異世界に飛ばされてしまったある男が宇宙船の人工頭脳や自動機械たちと協力し、新たな国を作って異世界人に対抗し始める。 最初は慎重に動いていた男だったが、徐々に世界の表舞台へ立たざるを得なくなっていき――。 ※冒頭部分でSF的な描写があり、SF要素も随所に出てきますが、土台となる部分は王道系の異世界ファンタジーだと思って読んでください。 一部地球の文明や法則を参考にしていますが、主人公が元居た世界は地球という名前のパラレルワールドです。食文化が現時点のものであるにもかかわらず、宇宙船や機械の技術が異様に発展していたり物理法則がおかしかったりしますので、あくまでパラレルワールドの出来事としてお読みください。 「BEYOND A WORLD」という題名の冠詞が「A」なのも、パラレルワールド的考えで複数世界が存在するという設定からです。 ところどころ、うんちく臭い説明がありますがAIが味方だったり現代から何百年後の主人公という設定に説得力をもたせるためなので何卒ご理解ください。

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

♪イキイキさん ~インフィニットコメディー! ミラクルワールド!~ 〈初日 巳よっつの刻(10時30分頃)〉

神棚 望良(かみだな もちよし)
ファンタジー
「♪吾輩(わあがはあい~)は~~~~~~ ♪一丁前(いっちょおうまええ)の~~~~~~ ♪ネコさんなんだもの~~~~~~ ♪吾輩(わあがはあい~)は~~~~~~ ♪一丁前(いっちょおうまええ)の~~~~~~ ♪ネコさんなんだもの~~~~~~ ♪吾輩(わあがはあい~)は~~~~~~ ♪一丁前(いっちょおうまええ)の~~~~~~ ♪ネコさんなんだもの~~~~~~」 「みんな、みんな~~~!今日(こお~~~~~~んにち~~~~~~わあ~~~~~~!」 「もしくは~~~、もしくは~~~、今晩(こお~~~~~~んばん~~~~~~わあ~~~~~~!」 「吾輩の名前は~~~~~~、モッチ~~~~~~!さすらいの~~~、駆け出しの~~~、一丁前の~~~、ネコさんだよ~~~~~~!」 「これから~~~、吾輩の物語が始まるよ~~~~~~!みんな、みんな~~~、仲良くしてね~~~~~~!」 「♪吾輩(わあがはあい~)は~~~~~~ ♪一丁前(いっちょおうまええ)の~~~~~~ ♪ネコさんなんだもの~~~~~~ ♪吾輩(わあがはあい~)は~~~~~~ ♪一丁前(いっちょおうまええ)の~~~~~~ ♪ネコさんなんだもの~~~~~~ ♪吾輩(わあがはあい~)は~~~~~~ ♪一丁前(いっちょおうまええ)の~~~~~~ ♪ネコさんなんだもの~~~~~~」

人生負け組のスローライフ

雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした! 俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!! ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。 じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。  ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。 ―――――――――――――――――――――― 第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました! 皆様の応援ありがとうございます! ――――――――――――――――――――――

異界娘に恋をしたら運命が変わった男の話〜不幸の吹き溜り、薄幸の美姫と言われていた俺が、英雄と呼ばれ、幸運の女神と結ばれて幸せを掴むまで〜

春紫苑
恋愛
運命の瞬間は早朝。 泉から伸びる手に触れたことが、レイシールの未来を大きく変えた。 引き上げられた少女は、自らを異界人であると告げ、もう帰れないのかと涙をこぼした。 彼女を還してやるために、二人は共に暮らすこととなり……。 領主代行を務めるレイシールの、目下の課題は、治水。毎年暴れる河をどうにかせねば、領地の運営が危うい。 だが、彼の抱える問題はそれだけではない。 妾腹という出自が、レイシールの人生をひどく歪なものにしていた。 喪失の過去。嵐中の彼方にある未来。二人は選んだ道の先に何を得るのか!

異世界でゆるゆる生活を満喫す 

葉月ゆな
ファンタジー
辺境伯家の三男坊。数か月前の高熱で前世は日本人だったこと、社会人でブラック企業に勤めていたことを思い出す。どうして亡くなったのかは記憶にない。ただもう前世のように働いて働いて夢も希望もなかった日々は送らない。 もふもふと魔法の世界で楽しく生きる、この生活を絶対死守するのだと誓っている。 家族に助けられ、面倒ごとは優秀な他人に任せる主人公。でも頼られるといやとはいえない。 ざまぁや成り上がりはなく、思いつくままに好きに行動する日常生活ゆるゆるファンタジーライフのご都合主義です。

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

処理中です...