十五の石の物語

ルカ(聖夜月ルカ)

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9、十字石(中心的な存在)スタウロライト

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フランツの家までは、考えていた以上に険しい道のりだった。
 皆の顔に玉の汗が浮かんできた頃、ようやく小さな小屋が私達の目に映った。



 「きっと、あれだね!」

 小屋を見た途端、私達の疲れはどこかに吹き飛んだ。
 足取りも軽く、私達は小屋へ向かって駆け出した。

ゴツゴツした素朴な木のドアを叩く。



 「こんにちは!」



しかし、何度叩いても中からの返事はなかった。



 「もしかして、おじいさん……家の中で倒れてるんじゃないだろうね。」

 「まさか…!」

 「だって、すごい年寄りだっていう話じゃないか…そういうことだってないとは言えないよ。」

サリーの話を聞いて不安になった私がノブを回すと、ドアは軋んだ音を立てながら開いた。
そのことが、さらに私の心を不安にさせた。



 「こんにちは!
フランツさん、いらっしゃいますか?」

 声をかけるが、家の中は静まり返り、人の気配がない。

 勝手に他人の家に立ち入ることに罪悪感を感じながらも、フランツに何かあったのでは大変だと、私達は恐る恐る部屋の中へ入っていく…

私が居間の先のドアに手をかけた時……

「こらぁ~!!」という雷のような怒声が背中から響き渡った。
 驚いて一斉に振り返ると、その声とはおよそ似つかわしくない小柄な老人が立っていた。

 老人は物騒なことに手に鍬を持ち、頭上高くにふりかざしている。



 「おまえ達、馬鹿じゃないのか!
こんな所に金目のもんがあるわけないじゃろうが!
 年寄りだと思ってなめるんじゃないぞ!
そこへなおれ~!」

 「あ、あの…ご老人、私達は、その……」

 「黙れ!盗人めが!」

 老人は、私の話を聞こうともせず、私達の傍ににじり寄る。 
 
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