十五の石の物語

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
172 / 449
9、十字石(中心的な存在)スタウロライト

しおりを挟む
その時、私はローラの事を今まで一度も思い出さなかったことに気付き、そのことを不思議に思った。



ローラ…
幼い頃からの友人であり、私の婚約者とされていた女性。
 美しく高い知性を持ち恵まれた環境で育った彼女とのつきあいは、まるで生まれた時から決まっていたことのように自然なものだった。
プロポーズをした覚えはなかったが、まわりはいつの間にか彼女のことを私の婚約者として扱うようになり、私もそのことに反感を抱くことはなかった。
 彼女と過ごす時間は快適なもので、特に不満のようなものもなく、多分、私は彼女を愛し、彼女も私のことを愛してくれているのだろうと…
漠然とそんな風に感じていた。
 私は「愛」とは、そういう穏やかなものだと考えていたのかもしれない。
なにせ、すべてが満ち足りていたのだから…

しかし、それならばなぜ、今まで彼女のことを一度たりとも思い出さなかったのだろうと、私はそのことが自分でも不思議でならなかった。



 (……まさか、あれが「愛」ではなかったというのか…?
……いや、違う…
私は今、自分のなすべきことに心を奪われているだけのこと。
 今までに体験したことのなかったようなことが起こりすぎてしまったから…
そう、それだけのことなのだ。
 彼女への気持ちが変わったわけではない。)

そんな風に理由を付けてみたのだが、私の心の底にはもやもやした疑問が残っていた。



 (なぜ、私は一度も彼女の事を思い出さなかったのだろう…?!)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

人生負け組のスローライフ

雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした! 俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!! ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。 じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。  ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。 ―――――――――――――――――――――― 第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました! 皆様の応援ありがとうございます! ――――――――――――――――――――――

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

ガチャから始まる錬金ライフ

あに
ファンタジー
河地夜人は日雇い労働者だったが、スキルボールを手に入れた翌日にクビになってしまう。 手に入れたスキルボールは『ガチャ』そこから『鑑定』『錬金術』と手に入れて、今までダンジョンの宝箱しか出なかったポーションなどを冒険者御用達の『プライド』に売り、億万長者になっていく。 他にもS級冒険者と出会い、自らもS級に上り詰める。 どんどん仲間も増え、自らはダンジョンには行かず錬金術で飯を食う。 自身の本当のジョブが召喚士だったので、召喚した相棒のテンとまったり、時には冒険し成長していく。

異世界でスローライフを目標にしましたが、モテ期到来で先の話になりそうです。

koh
ファンタジー
転生のきっかけは一通のメールだった。 侑(ゆう)に神が与えてくれたのは、特殊なスキルだった。 異世界をまったり旅するスローライフを夢見た主人公が色々な出会いに翻弄されながら成長していく物語の予定です。。

残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~

日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ― 異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。 強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。 ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる! ―作品について― 完結しました。 全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。

精霊の加護を持つ聖女。偽聖女によって追放されたので、趣味のアクセサリー作りにハマっていたら、いつの間にか世界を救って愛されまくっていた

向原 行人
恋愛
精霊の加護を受け、普通の人には見る事も感じる事も出来ない精霊と、会話が出来る少女リディア。 聖女として各地の精霊石に精霊の力を込め、国を災いから守っているのに、突然第四王女によって追放されてしまう。 暫くは精霊の力も残っているけれど、時間が経って精霊石から力が無くなれば魔物が出て来るし、魔導具も動かなくなるけど……本当に大丈夫!? 一先ず、この国に居るとマズそうだから、元聖女っていうのは隠して、別の国で趣味を活かして生活していこうかな。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!

つくも茄子
ファンタジー
義姉は王家とこの国に殺された。 冤罪に末に毒杯だ。公爵令嬢である義姉上に対してこの仕打ち。笑顔の王太子夫妻が憎い。嘘の供述をした連中を許さない。我が子可愛さに隠蔽した国王。実の娘を信じなかった義父。 全ての復讐を終えたミゲルは義姉の墓前で報告をした直後に世界が歪む。目を覚ますとそこには亡くなった義姉の姿があった。過去に巻き戻った事を知ったミゲルは今度こそ義姉を守るために行動する。 巻き戻った世界は同じようで違う。その違いは吉とでるか凶とでるか……。

ハズレ職〈召喚士〉がS級万能職に化けました〜無能と蔑まれた俺、伝説の召喚獣達に懐かれ力が覚醒したので世界最強です~

ヒツキノドカ
ファンタジー
 全ての冒険者は職業を持ち、その職業によって強さが決まる。  その中でも<召喚士>はハズレ職と蔑まれていた。  召喚の契約を行うには『召喚スポット』を探し当てる必要があるが、召喚スポットはあまりに発見が困難。  そのためほとんどの召喚士は召喚獣の一匹すら持っていない。  そんな召喚士のロイは依頼さえ受けさせてもらえず、冒険者ギルドの雑用としてこき使われる毎日を過ごしていた。  しかし、ある日を境にロイの人生は一変する。  ギルドに命じられたどぶさらいの途中で、ロイは偶然一つの召喚スポットを見つけたのだ。  そこで手に入ったのは――規格外のサーチ能力を持つ最強クラスの召喚武装、『導ノ剣』。  この『導ノ剣』はあらゆるものを見つけ出せる。  たとえそれまでどんな手段でも探知できないとされていた召喚スポットさえも。    ロイは『導ノ剣』の規格外なサーチ能力によって発見困難な召喚スポットをサクサク見つけ、強力な召喚獣や召喚武装と契約し、急激に成長していく。  これは底辺と蔑まれた『召喚士』が、圧倒的な成長速度で成り上がっていく痛快な物語。 ▽ いつも閲覧、感想等ありがとうございます! 執筆のモチベーションになっています! ※2021.4.24追記 更新は毎日12時過ぎにする予定です。調子が良ければ増えるかも? ※2021.4.25追記 お陰様でHOTランキング3位にランクインできました! ご愛読感謝! ※2021.4.25追記 冒頭三話が少し冗長だったので、二話にまとめました。ブクマがずれてしまった方すみません……!

処理中です...