十五の石の物語

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
71 / 449
4、菫青石(アイデンティティ)アイオライト

14

しおりを挟む
(良い香りだ…)



 運ばれてきたのは、私の大好きなダージリンティだった。
 部屋を見る限りでは、とてもじゃないが繊細な性格には見えないが、彼の煎れたお茶は予想外にうまいものだった。



 「良い茶葉だ…
しかも、とても上手にいれられている。」

 「おっ!わかるかい?これでも、俺はお茶だけにはうるさいんだ。」

 「わかりますとも…」

 「嬉しいねぇ…!」

 思わぬ所で共通点がみつかり、私達の会話は一気に和やかな雰囲気になった。



 「……あんたのその指輪、アマゾナイトだろう!」

カップを持つ私の指のアマゾナイトを見ながら、男は声をかけた。



 「よくご存じですね。」

 「おふくろがこういう石が好きでさ…」

そういうと、男は奥の部屋から大きな宝石箱を持ってきて私の前に差し出した。
その中には、無造作にたくさんの石のアクセサリーが入っていた。



 「ほら、これがアマゾナイト!」

そう言いながら、男は箱の中から青いブローチを取り出した。



 「これがアメジストで…こっちがスモーキークォーツで…」

 男が石を取り出しながら、一つ一つの名前をあげていく。

ふと見ると、男が腕にブレスレットを付けているのが目に止まった。
それは、透き通るような青紫の石…



「それは…?」

 「えっ?あ、これかい?
これはアイオライト。
けっこう綺麗だろ?
 良かったら、これも持っていくかい。
 石、好きなんだろ?」

 「いえ…
ただ、とても綺麗な石だな…と思ったのです。」

 「そうだろ?
 俺もそう思って、衝動買いしちまったのさ。
ま、俺の場合はいつも衝動買いなんだけどさ。」

 不思議と心ひかれる石だったが、あまりそんなことを言っていると、また気前良く「持っていきな!」と言われそうだと思い、私はそれ以上その石の話をするのを控えた。 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

78~運命のカード

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
一流の占い師を目指すダニエルは、ある時、おかしな老人に一組のカードをもらった。 それは、ダニエルの人生を大きく変える世にも珍しいカードだった… ※表紙画は、蓮冶様に描いていただきました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...