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2、黒水晶(規律と守護)モリオン
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「精霊の木へはどのくらいかかるんだ?」
「多分、暗くなるまでには着けるよ」
「けっこう遠いのだな。
君は、西の塔の魔女に手紙を出したことはあるのか?」
「ないよ。出してみようかと思ったことはあったけど、なんせ偉大な人だから、余程の大事じゃないと出しちゃいけないって思って、出せなかったんだよ。」
「……ということは、私のことは、余程の大事だってことか……」
私は軽い気持ちでそう言ったのだが、サリーは一瞬にして顔を曇らせ、黙って辛そうにこくりと頷いた。
それを見た途端、私は妙な不安にかられ、なんともいえない重苦しい空気に包まれ、私達は黙りこくったまま歩き続けた。
ピェールの店を出てからというもの、どんどん寂しい道になっていき、昼食をとる店も見当たらない。
途中で少し休まないかと声をかけたが、サリーは早く木の所まで行きたいからと言って足を停めなかった。
ほとんどしゃべることもなく、私達はただ黙々と歩き続けた。
いいかげん歩き疲れて、さすがに私が音を上げそうになった頃、サリーが唐突に声をあげた。
「あれだよ!あれが『精霊の木』だよ!」
サリーの指差す先には、広く腕を広げた大きな木があった。
駆け出すサリーの後について、私も走った。
(あれだな。)
私はすぐに、木のポストをみつけた。
サリーが手をまっすぐにのばしてやっと届くあたりにそのポストはあった。
サリーはあらかじめ書いて来た手紙を胸に抱くと、小さな声で何か呟き、それから手をのばし、爪先立ちになってポストにそれを投函した。
私が手紙をさらに奥へと少し押し込む。
「精霊の木へはどのくらいかかるんだ?」
「多分、暗くなるまでには着けるよ」
「けっこう遠いのだな。
君は、西の塔の魔女に手紙を出したことはあるのか?」
「ないよ。出してみようかと思ったことはあったけど、なんせ偉大な人だから、余程の大事じゃないと出しちゃいけないって思って、出せなかったんだよ。」
「……ということは、私のことは、余程の大事だってことか……」
私は軽い気持ちでそう言ったのだが、サリーは一瞬にして顔を曇らせ、黙って辛そうにこくりと頷いた。
それを見た途端、私は妙な不安にかられ、なんともいえない重苦しい空気に包まれ、私達は黙りこくったまま歩き続けた。
ピェールの店を出てからというもの、どんどん寂しい道になっていき、昼食をとる店も見当たらない。
途中で少し休まないかと声をかけたが、サリーは早く木の所まで行きたいからと言って足を停めなかった。
ほとんどしゃべることもなく、私達はただ黙々と歩き続けた。
いいかげん歩き疲れて、さすがに私が音を上げそうになった頃、サリーが唐突に声をあげた。
「あれだよ!あれが『精霊の木』だよ!」
サリーの指差す先には、広く腕を広げた大きな木があった。
駆け出すサリーの後について、私も走った。
(あれだな。)
私はすぐに、木のポストをみつけた。
サリーが手をまっすぐにのばしてやっと届くあたりにそのポストはあった。
サリーはあらかじめ書いて来た手紙を胸に抱くと、小さな声で何か呟き、それから手をのばし、爪先立ちになってポストにそれを投函した。
私が手紙をさらに奥へと少し押し込む。
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