上 下
15 / 449
2、黒水晶(規律と守護)モリオン

しおりを挟む
「いらっしゃいませ。」



 私は温かい紅茶と軽い朝食を注文した。

 早朝のためか、店内には私以外に客の姿はない。



 (この二人はどういう関係だろう?親子?…いや、それにしては顔も雰囲気も似ていない。
では、年の離れた夫婦なのか?)

 二人のことが特に気になったわけではなかったが、話す相手もなく、これから先の行き先も決まらないため、私は、なんとなくそんなことを考えた。



 「あら、お客さん!」

 不意に声をかけられ、私のつまらない物思いは中断された。
 気が付くと、店の女性が微笑みながら私の横に立っていた。



 「何か?」

 「とっても素敵な指輪だこと!」

 女性は私の手を取り、しげしげと指輪をみつめる。



 「よさないか、ロアンヌ!」

 女性は、店主の声等聞こえなかったかのように知らん顔をして、指輪を見続けた。



 「良いアマゾナイトだね。」

そういうと、ロアンヌは私の手をなお一層自分の方に引き寄せ眺めすかした。



 「お客さん、この石はね、夢と冒険の石なんだよ。
 何か迷いがある時、今ひとつ決断出来ない時に、この石は必ず味方になってくれるよ。」

そう言うと、ロアンヌは私の手を離し、またにこにこと微笑んだ。



 「夢と冒険の石か……それは知らなかった。
あなたは石についてお詳しいのですね。」

 「詳しくなんかないですよ。
 好きなだけでね。」

その言葉に私の頭にひらめくものがあった。
これ程石が好きなら、もしかしたらあの老人のことを知っているのではないかと……



「あの…このあたりに宝石商を……」

 私は、言いかけて気が付いた。
あの老人が宝石商であるわけがないと。

 行商をしているとしても、あれっぱかしの宝石だけで商売が成り立つわけがない。



 (では、あの老人は一体……)

 私の頭の中にまた新たな疑問が生まれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

武装魔術戦争~融奏のフリーディア~

めぐりん
ファンタジー
 自分が何をしたいのか? どう在りたいのか? 何を為すべきなのか? そんな葛藤を胸にユーリ・クロイスは中等部卒業後、フリーディア統合連盟軍に入隊する。  この世界には、異種族と呼ばれる生物が存在し、その異種族の侵略から人々を守るためにフリーディア統合連盟軍は存在している。進路について母親と喧嘩して家を飛び出したユーリだが、初めて戦場に赴き、自分が今まで何も知らずに安穏とした日常を送っていたことを痛感する。それと同時にこれまで当たり前だと思ってきたことに対する疑問も同時に浮かび上がる。  そもそも異種族とは何だ? 何故彼らと戦争をする必要があるのか? この世界の在り方は本当に正しいのか?  これは、ユーリ・クロイスという一人の少年を起点に、様々な登場人物たちの想いが交錯し、世界に大きな変革を齎していく物語。 『悲劇に満ちた残酷なこの世界で、今度こそ完全無欠の大円団を目指して――』

【ダンジョン公社、求人のお知らせ】 勤務地、72号ダンジョン。 オープニングスタッフ募集中。 未経験OK、アットホームな職場です。

小倉ひろあき
ファンタジー
魔王軍の将軍としてキャリアを重ねてきたエドは、上のポストが空かないために魔王(ポンコツ美女)から転職を打診される。  新たな職場は新設されるダンジョン。  ダンジョンの役割とは、冒険者を集め、魔族の生活を支えるエネルギーを蓄えることだった。  スタッフは美人王女、元気なドワーフ女子、獣人の少女、モッフモフの猫……あとヤクザ面のドワーフ。  右も左も分からない中、試行錯誤を重ねながらも楽しいダンジョンライフが幕を開けた――かもしれない。

Campus91

茉莉 佳
ライト文芸
1991年、バブル末期の女子大生、「さつき」と「みっこ」が出会い、恋をし、友情を育んでいく青春恋愛ライトノベル。 殺人事件も超常現象も出てこない、身近な等身大の友情と恋愛の物語。内容はちょっと固めかも。20話程度の読み切りで構成していく予定です。(一部性描写あり) *このお話はフィクションで、実在する地名や会社、個人とは関係ありません。

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

私は魔法最強の《精霊巫女》でした。〜壮絶な虐めを受けてギルドをクビにされたので復讐します。今更「許してくれ」と言ってももう遅い〜

水垣するめ
ファンタジー
アイリ・ホストンは男爵令嬢だった。 しかし両親が死んで、ギルドで働くことになったアイリはギルド長のフィリップから毎日虐めを受けるようになった。 日に日に虐めは加速し、ギルドの職員までもアイリを虐め始めた。 それでも生活費を稼がなければなかったため屈辱に耐えながら働いてきたが、ある日フィリップから理不尽な難癖をつけられ突然ギルドをクビにされてしまう。 途方に暮れたアイリは冒険者となって生計を立てようとするが、Aランクの魔物に襲われた時に自分が《精霊巫女》と呼ばれる存在である事を精霊から教えられる。 しかも実はその精霊は最強の《四大精霊》の一角で、アイリは一夜にしてSランク冒険者となった。 そして自分をクビにしたギルドへ復讐することを計画する。 「許してくれ!」って、全部あなた達が私にしたことですよね? いまさら謝ってももう遅いです。 改訂版です。

異世界二度目のおっさん、どう考えても高校生勇者より強い

八神 凪
ファンタジー
   旧題:久しぶりに異世界召喚に巻き込まれたおっさんの俺は、どう考えても一緒に召喚された勇者候補よりも強い  【第二回ファンタジーカップ大賞 編集部賞受賞! 書籍化します!】  高柳 陸はどこにでもいるサラリーマン。    満員電車に揺られて上司にどやされ、取引先には愛想笑い。  彼女も居ないごく普通の男である。  そんな彼が定時で帰宅しているある日、どこかの飲み屋で一杯飲むかと考えていた。  繁華街へ繰り出す陸。  まだ時間が早いので学生が賑わっているなと懐かしさに目を細めている時、それは起きた。  陸の前を歩いていた男女の高校生の足元に紫色の魔法陣が出現した。  まずい、と思ったが少し足が入っていた陸は魔法陣に吸い込まれるように引きずられていく。  魔法陣の中心で困惑する男女の高校生と陸。そして眼鏡をかけた女子高生が中心へ近づいた瞬間、目の前が真っ白に包まれる。  次に目が覚めた時、男女の高校生と眼鏡の女子高生、そして陸の目の前には中世のお姫様のような恰好をした女性が両手を組んで声を上げる。  「異世界の勇者様、どうかこの国を助けてください」と。  困惑する高校生に自分はこの国の姫でここが剣と魔法の世界であること、魔王と呼ばれる存在が世界を闇に包もうとしていて隣国がそれに乗じて我が国に攻めてこようとしていると説明をする。    元の世界に戻る方法は魔王を倒すしかないといい、高校生二人は渋々了承。  なにがなんだか分からない眼鏡の女子高生と陸を見た姫はにこやかに口を開く。  『あなた達はなんですか? 自分が召喚したのは二人だけなのに』  そう言い放つと城から追い出そうとする姫。    そこで男女の高校生は残った女生徒は幼馴染だと言い、自分と一緒に行こうと提案。  残された陸は慣れた感じで城を出て行くことに決めた。  「さて、久しぶりの異世界だが……前と違う世界みたいだな」  陸はしがないただのサラリーマン。  しかしその実態は過去に異世界へ旅立ったことのある経歴を持つ男だった。  今度も魔王がいるのかとため息を吐きながら、陸は以前手に入れた力を駆使し異世界へと足を踏み出す――

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

誕生石の小物

三枝七星
ファンタジー
誕生石をモチーフにしたファンタジーアイテムのSS集です。 似たような作品群(https://www.alphapolis.co.jp/novel/519967146/971834185) (※リアルの社会情勢を反映しておりません) (※職業についての考察は詳細に行なっておりません) (※現実的な法律、道徳、倫理、人権、衛生の面で「誤り」「加害的」「差別的」であることも描写されますが、これらを「是」とするものではありません) (※随時修正する可能性はあります) 参考・引用文献 有名石から超希少石まで美しい写真でよくわかる宝石図鑑(KARATZ・小山慶一郎/日本文芸社/2023年) 世界観設定のための宝石図鑑(飯田孝一/エクスナレッジ/2022年) 守護石パワーストーン組み合わせ&相性大辞典(登石麻恭子・須田布由香・玉井宏/河出書房新社/2021年)

処理中です...