6 / 449
1、天河石(約束の日)アマゾナイト
5
しおりを挟む
(何を売りつけるつもりなのかは知らないが…
買ってなんかやらないからな!)
そう思うと同時に、私の瞳は、あるものに釘付けになっていた。
黒い小さな箱の中に並べられたいくつかの指輪…
その中に、一つの碧色の石があった。
……懐かしさなのか、何なのか…
たとえようのない感情がこみあげ、気が付くと私はその碧色の石の指輪を手に取っていた。
空と森が混じりあったようなその石は、私の指におさまるのを待っていたかのようにすんなりとはまった。
「……やっと会えたな…」
「何ですって?!」
老人は何も答えず、ただ静かに微笑む。
「……この石は…?」
老人には答える気がなさそうなので、私は質問を変えた。
「…その石の名はアマゾナイト…」
「アマゾナイト…?」
「……そうじゃ…」
(アマゾナイト……)
それは聞いた事のない名前だった。
きっと、それほど高価な物ではないのだろう。
一呼吸置いてから、私は思い詰めた顔を老人に向けた。
「……この指輪を譲ってはいただけませんか?」
さっきまで、絶対に何も買ってやらないと思っていたのに…たいした物ではないともわかっているのに、悔しいことに私はその指輪にすっかり心奪われていた。
「何?この石を譲ってほしいじゃと…」
老人は俯き、また声を押さえて笑った。
「なぜ笑うのです…?!」
「……おまえさんがおかしなことを言うからじゃ。
その石はおまえさんのものではないか…」
「この石が、私の…?」
老人は、頷きながらおかしそうにまた笑う…
そのことで私が不機嫌な顔をしているのを見てとると、老人はぎこちない愛想笑いを浮かべた。
「……笑ったりしてすまなんだな。
焦ることはない。
そのうち、きっとわかるじゃろうて……」
「何がわかると言われるのです?」
「……何もかも、その石が教えてくれるじゃろう…」
「……この石が…?」
老人が何を言っているのか、私にはさっぱり理解出来なかった。
買ってなんかやらないからな!)
そう思うと同時に、私の瞳は、あるものに釘付けになっていた。
黒い小さな箱の中に並べられたいくつかの指輪…
その中に、一つの碧色の石があった。
……懐かしさなのか、何なのか…
たとえようのない感情がこみあげ、気が付くと私はその碧色の石の指輪を手に取っていた。
空と森が混じりあったようなその石は、私の指におさまるのを待っていたかのようにすんなりとはまった。
「……やっと会えたな…」
「何ですって?!」
老人は何も答えず、ただ静かに微笑む。
「……この石は…?」
老人には答える気がなさそうなので、私は質問を変えた。
「…その石の名はアマゾナイト…」
「アマゾナイト…?」
「……そうじゃ…」
(アマゾナイト……)
それは聞いた事のない名前だった。
きっと、それほど高価な物ではないのだろう。
一呼吸置いてから、私は思い詰めた顔を老人に向けた。
「……この指輪を譲ってはいただけませんか?」
さっきまで、絶対に何も買ってやらないと思っていたのに…たいした物ではないともわかっているのに、悔しいことに私はその指輪にすっかり心奪われていた。
「何?この石を譲ってほしいじゃと…」
老人は俯き、また声を押さえて笑った。
「なぜ笑うのです…?!」
「……おまえさんがおかしなことを言うからじゃ。
その石はおまえさんのものではないか…」
「この石が、私の…?」
老人は、頷きながらおかしそうにまた笑う…
そのことで私が不機嫌な顔をしているのを見てとると、老人はぎこちない愛想笑いを浮かべた。
「……笑ったりしてすまなんだな。
焦ることはない。
そのうち、きっとわかるじゃろうて……」
「何がわかると言われるのです?」
「……何もかも、その石が教えてくれるじゃろう…」
「……この石が…?」
老人が何を言っているのか、私にはさっぱり理解出来なかった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
異世界子ども食堂:通り魔に襲われた幼稚園児を助けようとして殺されたと思ったら異世界に居た。
克全
児童書・童話
両親を失い子ども食堂のお世話になっていた田中翔平は、通り魔に襲われていた幼稚園児を助けようとして殺された。気がついたら異世界の教会の地下室に居て、そのまま奴隷にされて競売にかけられた。幼稚園児たちを助けた事で、幼稚園の経営母体となっている稲荷神社の神様たちに気に入られて、隠しスキルと神運を手に入れていた田中翔平は、奴隷移送用馬車から逃げ出し、異世界に子ども食堂を作ろうと奮闘するのであった。
【完結】投げる男〜異世界転移して石を投げ続けたら最強になってた話〜
心太
ファンタジー
【何故、石を投げてたら賢さと魅力も上がるんだ?!】
(大分前に書いたモノ。どこかのサイトの、何かのコンテストで最終選考まで残ったが、その後、日の目を見る事のなかった話)
雷に打たれた俺は異世界に転移した。
目の前に現れたステータスウインドウ。そこは古風なRPGの世界。その辺に転がっていた石を投げてモンスターを倒すと経験値とお金が貰えました。こんな楽しい世界はない。モンスターを倒しまくってレベル上げ&お金持ち目指します。
──あれ? 自分のステータスが見えるのは俺だけ?
──ステータスの魅力が上がり過ぎて、神話級のイケメンになってます。
細かい事は気にしない、勇者や魔王にも興味なし。自分の育成ゲームを楽しみます。
俺は今日も伝説の武器、石を投げる!
傭兵を雇う傭兵、報酬は美味い食事にフカフカのベッド、不遇の製作魔法から始める下剋上
まったりー
ファンタジー
とある多人数戦闘ゲームを楽しんでいた主人公は、その大会があるという事で出場しました。しかしその大会は実は異世界に行くための選抜で、トップ10入りしたプレイヤーは異世界に飛ばされてしまいます。
ステータスはそのままで、ゲームと同じ様に傭兵として戦う事になった主人公は、製作魔法を使う後衛者のままで戦う事を決めます。
悪女の指南〜媚びるのをやめたら周囲の態度が変わりました
結城芙由奈
恋愛
【何故我慢しなければならないのかしら?】
20歳の子爵家令嬢オリビエは母親の死と引き換えに生まれてきた。そのため父からは疎まれ、実の兄から憎まれている。義母からは無視され、異母妹からは馬鹿にされる日々。頼みの綱である婚約者も冷たい態度を取り、異母妹と惹かれ合っている。オリビエは少しでも受け入れてもらえるように媚を売っていたそんなある日悪女として名高い侯爵令嬢とふとしたことで知りあう。交流を深めていくうちに侯爵令嬢から諭され、自分の置かれた環境に疑問を抱くようになる。そこでオリビエは媚びるのをやめることにした。するとに周囲の環境が変化しはじめ――
※他サイトでも投稿中
〈本編完結〉ふざけんな!と最後まで読まずに投げ捨てた小説の世界に転生してしまった〜旦那様、あなたは私の夫ではありません
詩海猫
ファンタジー
こちらはリハビリ兼ねた思いつき短編として出来るだけ端折って早々に完結予定でしたが、予想外に多くの方に読んでいただき、書いてるうちにエピソードも増えてしまった為長編に変更致しましたm(_ _)m
ヒロ回だけだと煮詰まってしまう事もあるので、気軽に突っ込みつつ楽しんでいただけたら嬉しいです💦
*主人公視点完結致しました。
*他者視点準備中です。
*思いがけず沢山の感想をいただき、返信が滞っております。随時させていただく予定ですが、返信のしようがないコメント/ご指摘等にはお礼のみとさせていただきます。
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
顔をあげると、目の前にラピスラズリの髪の色と瞳をした白人男性がいた。
周囲を見まわせばここは教会のようで、大勢の人間がこちらに注目している。
見たくなかったけど自分の手にはブーケがあるし、着ているものはウエディングドレスっぽい。
脳内??が多過ぎて固まって動かない私に美形が語りかける。
「マリーローズ?」
そう呼ばれた途端、一気に脳内に情報が拡散した。
目の前の男は王女の護衛騎士、基本既婚者でまとめられている護衛騎士に、なぜ彼が入っていたかと言うと以前王女が誘拐された時、救出したのが彼だったから。
だが、外国の王族との縁談の話が上がった時に独身のしかも若い騎士がついているのはまずいと言う話になり、王命で婚約者となったのが伯爵家のマリーローズである___思い出した。
日本で私は社畜だった。
暗黒な日々の中、私の唯一の楽しみだったのは、ロマンス小説。
あらかた読み尽くしたところで、友達から勧められたのがこの『ロゼの幸福』。
「ふざけんな___!!!」
と最後まで読むことなく投げ出した、私が前世の人生最後に読んだ小説の中に、私は転生してしまった。
ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~
楠富 つかさ
ファンタジー
地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。
そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。
できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!!
第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!
腹黒優等生の一軍男子に溺愛されるまでの青春ラブストーリー【高嶺の君とキズナを紡ぐ】
Alanhart
恋愛
いじめられたことが切っ掛けで不登校中の少女、成海は男性同士の恋愛に熱中するオタク腐女子。一方、突然転校してきた転校生は、学校中をにぎわせるほど美しい容姿を持ち、成績は学年トップ。抜群の運動神経を備えた完璧な優等生として注目を集めていた。
ある日、少年は、担任の先生に頼まれクラスメイトの成海の元へ学校の配布プリントを届ける係を請け負うことに。しかし、人間不信を拗らせた成海にとって、突然やってきた見知らぬ少年は恐怖の存在でしかない。
きっと、嫌がらせに来たに違いないと、頑なに心を閉ざす成海だったが。結局、一緒に勉強することになってーー。
『何があっても、俺がきみをまもるから』
自分の容姿に自信がないぽっちゃりが美少年と紡ぐ、友情から恋へと続くスクール青春ラブストーリー‼︎
※主人公は痩せません。
※暴力表現や、いじめ表現があります。
※中学生時代(友情)→高校時代(恋愛)→成人(溺愛)へと進んでいきます。
※しっかりとストーリーやキャラクターを楽しみたい方向けです。中学生時代の様々な過程を経て、美少年が主人公に恋をしていきます。
※サクッと恋愛のみを楽しみたい方には向きません。
※舞台は現代日本ですが、ICT教育が普及した後の中学校を想定しています。連絡物やテストは電子化されてる設定ですが、紙の教科書やノートの使用がまだされている描写があります。また、作者自身がICT教育への解像度が低いため、多分に想像も含まれます。その点を合わせて、フィクションとしてお楽しみください。
※【カクヨム先行公開中】その他、各小説サイトにも連載しています。
乾坤一擲
響 恭也
SF
織田信長には片腕と頼む弟がいた。喜六郎秀隆である。事故死したはずの弟が目覚めたとき、この世にありえぬ知識も同時によみがえっていたのである。
これは兄弟二人が手を取り合って戦国の世を綱渡りのように歩いてゆく物語である。
思い付きのため不定期連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる