2 / 449
1、天河石(約束の日)アマゾナイト
1
しおりを挟む
(特に何か不満があるというわけではないのだが…)
私は、ぼんやりと窓の外を眺めた。
幼い頃から見なれた風景だが、何度見ても見飽きる事のないお気に入りの風景だ。
私の家は地元では知らない者がいない、所謂、名家と呼ばれる貴族の家系だ。
当然裕福であり、一人息子である私は幼い頃から何不自由なく育てられた。
多忙な両親とは始終一緒にいられるというわけではなかったが、何かの記念日や私が悩みを持ちかけた時には、彼らは無理にでも時間を割き、必ず、私の傍に駆けつけてくれた。
それだけで、私の心は十分に満たされたが、その上、身の周りの世話をする使用人達も、皆、優しく気の届く人物だったため、私は特に寂しさを感じる事なく成長した。
良い友人達にも恵まれ、恋人と呼ばれる者もいる。
仕事にもそれなりにやりがいを感じている。
「この退屈な気分は悩む要素がないせい…というわけか…」
頭に浮かんだ想いを私は声に出していた。
やがて、ゆっくりと窓から見える碧い湖に目を移す。
幼い頃から私が特に好きだった碧い湖に…
ゆったりと雲が流れ、水面には小さな波紋さえ立たず、静かに碧い水を湛えている…
それは、まるで絵画のようでもあり、みつめていると世界の時までもが止まったかのように思える。
その瞬間が私はとても好きだった。
現実とは少し違う世界に心を置きながら、私は不意に思い出した。
そうだ、今日は市の立つ日だ…と。
商人や一般の人々がたくさんの露店を並べる日。
売り物のほとんどはありふれたものばかりだが、中にはめったにお目にかかれないような掘出しものが混じっていることもある。
特に何か欲しいものがあるわけではなかったが、雑踏の中に、ただ身を任せることは嫌いではなかった。
大勢の人の波に流されながらも、その中に溶け込めない奇妙な疎外感が、現実と幻の狭間にいるように思えて、どこか心地好い。
「出掛けてみるか…」
私は、自分の決意を強くするかのように、声に出してそう言うと部屋の扉を開いた。
私は、ぼんやりと窓の外を眺めた。
幼い頃から見なれた風景だが、何度見ても見飽きる事のないお気に入りの風景だ。
私の家は地元では知らない者がいない、所謂、名家と呼ばれる貴族の家系だ。
当然裕福であり、一人息子である私は幼い頃から何不自由なく育てられた。
多忙な両親とは始終一緒にいられるというわけではなかったが、何かの記念日や私が悩みを持ちかけた時には、彼らは無理にでも時間を割き、必ず、私の傍に駆けつけてくれた。
それだけで、私の心は十分に満たされたが、その上、身の周りの世話をする使用人達も、皆、優しく気の届く人物だったため、私は特に寂しさを感じる事なく成長した。
良い友人達にも恵まれ、恋人と呼ばれる者もいる。
仕事にもそれなりにやりがいを感じている。
「この退屈な気分は悩む要素がないせい…というわけか…」
頭に浮かんだ想いを私は声に出していた。
やがて、ゆっくりと窓から見える碧い湖に目を移す。
幼い頃から私が特に好きだった碧い湖に…
ゆったりと雲が流れ、水面には小さな波紋さえ立たず、静かに碧い水を湛えている…
それは、まるで絵画のようでもあり、みつめていると世界の時までもが止まったかのように思える。
その瞬間が私はとても好きだった。
現実とは少し違う世界に心を置きながら、私は不意に思い出した。
そうだ、今日は市の立つ日だ…と。
商人や一般の人々がたくさんの露店を並べる日。
売り物のほとんどはありふれたものばかりだが、中にはめったにお目にかかれないような掘出しものが混じっていることもある。
特に何か欲しいものがあるわけではなかったが、雑踏の中に、ただ身を任せることは嫌いではなかった。
大勢の人の波に流されながらも、その中に溶け込めない奇妙な疎外感が、現実と幻の狭間にいるように思えて、どこか心地好い。
「出掛けてみるか…」
私は、自分の決意を強くするかのように、声に出してそう言うと部屋の扉を開いた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる