ラッキーアイテムお題短編集5

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
27 / 34
パスケース(いて座)

しおりを挟む
「そうだったのか…だから、みんなの態度がおかしかったのか!」

そう言って袴田さんはおかしそうに笑い、バッグの中から定期入れを取り出すと、私にあの「彼」の写真を見せた。



「僕の大切な人…」

そう言う袴田さんの表情はとても穏やかで…



「僕の父さんだよ…」

「へぇ…袴田さんの……えっ?今、なんて!?」

「だから…僕の父親。
もちろん、若い頃の写真だけどね…」

そう言って、切ない笑みを見せた袴田さんは、自分の生い立ちについて話してくれた。
袴田さんのお母さんは、お父さんとのつきあいを両親に反対されていて、二人は駆け落ちして、そして袴田さんが産まれたのだという事だった。
だけど、その直後に、お母さんの両親にみつかってしまい、お母さんは赤ちゃんだった袴田さん共々、無理矢理に家に連れ戻されてしまったということだった。
ほぼ軟禁状態のような暮らしを続けながらも、袴田さんのお母さんは脱出の機会をうかがい、ようやく家を出てお父さんの所に戻ったものの、その時にはお父さんはその家を引き払っており、その後生き別れになったままなのだという。


「母さんは、苦労して僕を女手一つで育ててくれたんだ。
家に戻れば何の苦労もなく暮らせたのに、母さんはいつか父さんと出会えることを信じて家には戻らなかったし、再婚もしなかった。
母さんは今も一途に父さんのことを想ってるんだ。
すごい純愛でしょう?
僕はなんとか父さんを探し出して、母さんに会わせてあげたいし、それまでは結婚もしないって決めてるんだ。
だけど、全くといっていいほど手掛かりがなくてね…
この写真と母さんの記憶だけが手掛かりなんだ。」

「そんなことが…だから、袴田さんは…」

まるで、ドラマのような袴田さんの話に私は驚くと同時に感動した。
やっぱり、袴田さんは私が思ってた通りの…いや、それ以上の人だ!
それに、男の人が好きではないということがわかったのも嬉しい!



「袴田さん!私達にも、ぜひお手伝いをさせて下さい!」







次の日から袴田会では、お父さん探しの活動が始まった。
私達に出来ることなんて、たかが知れてるかもしれないけど、私達は全力で頑張ることを誓った。
もちろん、袴田さんに対する誤解は綺麗に釈明し、田村君には袴田さんに土下座をして謝らせ、今回の罰として、これからはますますこき使ってやることに決めた。 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ラッキーアイテムお題短編集6

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
星座のラッキーアイテムをお題に書いた短編集です。

ラッキーアイテムお題短編集7

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
オール1ページの超短編集です。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

1ページのあいうえお

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
1ページの中にいろんなものを詰め込んで… あいうえお順のお題で書く短編集です。 基本1ページですが、たまにオーバーします。 主にリクエストで書かせていただきました。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

処理中です...