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パスケース(いて座)
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「うっそーーー!」
「悪夢だわ!信じられない!」
「ショックーーー!」
昼下がりの社内食堂の一角で、女子社員達の落胆した声が密やかに重なった。
「あんた、いいかげんなこと言ってるんじゃないでしょうね!」
「ば、馬鹿なこと言わないで下さいよ!
僕は、この目でしっかり見たんですから!」
「そんなこと言って…あんた、袴田さんのことをねたんでそんな嘘吐いてるんじゃないでしょうね!」
「あ、そうだ!じゃ、写メしなさいよ!
そしたら信じられるから!」
「えーーーーっ!…そ、そんなことまで…」
「それであんたの潔白も証明されるんだから、ね!頑張んなさいよ!」
「……わかりましたよ。」
女子社員達の強気な命令に、田村は渋々席を立った。
「後は、写メ、待ちね…」
「でも、もしも、田村の言うことが本当だったらどうする?」
「どうするも何も、そうなったら諦めるしか仕方がないじゃない…」
「きっと、田村の言うことは本当よ。
だって…そうじゃなきゃ、あんな素敵な袴田さんが独身で、その上、彼女さえいないなんておかしいもん。」
「そうよねぇ…」
その一言をきっかけに、女子社員達の間からは同じようなため息が漏れた。
この騒ぎの中心人物は、袴場さん。
かっこ良くて優しくて仕事が出来てセンスが良くて、まさに非の打ち所がない素敵な人。
社内には「袴田会」という袴田さんのファンクラブまであって、当然、私もその袴田会の会員。
袴田さんは今年36歳という年にも関わらず、いまだ独身。
それどころか、浮いた話のひとつもない。
ただ、その原因には思い当たることがあり…
袴田さんは時々一人になった時に、定期入れを取り出してはそれを開いてみつめ、とても切ない顔をする。
つまり、袴田さんには想う人があり、それが不倫なのか何なのかはわからないけれど、とにかくなんらかの理由があって結ばれない運命なんだというのが私達の推測だった。
そして、それが誰なのかを確かめるために、新人社員の田村君が使われているのだけど、その田村君が今朝ついに袴田さんの定期入れの想い人を見たと報告してきて、しかも、その相手が、うら若き美青年だというから袴田会は俄かに色めき立ったのだ。
もちろん、私みたいな変凡な女が袴田さんとどうこうなれるとは思ってなかったけど、それでももし袴田さんの好きな人が男性だとしたら、それはやっぱりかなり大きなショックだ。
「悪夢だわ!信じられない!」
「ショックーーー!」
昼下がりの社内食堂の一角で、女子社員達の落胆した声が密やかに重なった。
「あんた、いいかげんなこと言ってるんじゃないでしょうね!」
「ば、馬鹿なこと言わないで下さいよ!
僕は、この目でしっかり見たんですから!」
「そんなこと言って…あんた、袴田さんのことをねたんでそんな嘘吐いてるんじゃないでしょうね!」
「あ、そうだ!じゃ、写メしなさいよ!
そしたら信じられるから!」
「えーーーーっ!…そ、そんなことまで…」
「それであんたの潔白も証明されるんだから、ね!頑張んなさいよ!」
「……わかりましたよ。」
女子社員達の強気な命令に、田村は渋々席を立った。
「後は、写メ、待ちね…」
「でも、もしも、田村の言うことが本当だったらどうする?」
「どうするも何も、そうなったら諦めるしか仕方がないじゃない…」
「きっと、田村の言うことは本当よ。
だって…そうじゃなきゃ、あんな素敵な袴田さんが独身で、その上、彼女さえいないなんておかしいもん。」
「そうよねぇ…」
その一言をきっかけに、女子社員達の間からは同じようなため息が漏れた。
この騒ぎの中心人物は、袴場さん。
かっこ良くて優しくて仕事が出来てセンスが良くて、まさに非の打ち所がない素敵な人。
社内には「袴田会」という袴田さんのファンクラブまであって、当然、私もその袴田会の会員。
袴田さんは今年36歳という年にも関わらず、いまだ独身。
それどころか、浮いた話のひとつもない。
ただ、その原因には思い当たることがあり…
袴田さんは時々一人になった時に、定期入れを取り出してはそれを開いてみつめ、とても切ない顔をする。
つまり、袴田さんには想う人があり、それが不倫なのか何なのかはわからないけれど、とにかくなんらかの理由があって結ばれない運命なんだというのが私達の推測だった。
そして、それが誰なのかを確かめるために、新人社員の田村君が使われているのだけど、その田村君が今朝ついに袴田さんの定期入れの想い人を見たと報告してきて、しかも、その相手が、うら若き美青年だというから袴田会は俄かに色めき立ったのだ。
もちろん、私みたいな変凡な女が袴田さんとどうこうなれるとは思ってなかったけど、それでももし袴田さんの好きな人が男性だとしたら、それはやっぱりかなり大きなショックだ。
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