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ともだち

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「わぁ、綺麗だね!」

彼は、目の前に自生する赤い花に顔を綻ばせた。



「……そうだね。」

さすがは早乙女君だ。
普通、花を見てあんなに嬉しそうな顔をする男性はまずいない。
彼は、影で『伯爵』と呼ばれている。
彼の醸し出す雰囲気が、貴族みたいだからということでだ。
彼は帰国子女でもある。
そんな彼と、こんな平凡な僕が、なぜ、親しくなったのか不思議なのだけど…
知り合ったきっかけすらも忘れてしまった。
きっと、僕は周りから『召使い』とでも呼ばれているんじゃなかろうか。
それならそれで、構わない。
僕達の大学生活は、至って楽しいものだから。



「あれ?どうしたのかな?思い出し笑いなんかしちゃって。」

「そんなんじゃないよ。
そんなことより、早乙女君、これはなんて言う花なんだい?」

「これは虞美人草だよ。」

「虞美人草…なんか聞いたことがあるような気がするよ。」

「本当に綺麗な景色だね。
今夜は、このあたりにテントを張ろうよ。」



僕は、早乙女君とキャンプに来た。
最近、キャンプが流行ってるからやってみたくなって…だめ元で早乙女君を誘ったら、意外にも良い返事がもらえたんだ。



早乙女君が慣れた手つきで、テントの準備に取り掛かり、僕はその手際の良さに、ただ驚くばかりだった。



「よし、綺麗に張れた。」

目の前には、三角のテントが佇んでいた。
チマキテントと呼ばれるものだ。



「すごいね。早乙女君。
テント張ったことがあるの?」

「昔、ボーイスカウトに入ってたから慣れてるんだ。
じゃあ、食事の準備をしようか。」

「そうだね。」

「薪を集めよう。」

僕達は、薪を探しに歩き始めた。



「米田く~ん!」

名前を呼ばれて振り返ると、早乙女君が手を振っていた。
僕は急いでその場に走った。



「どうした?何か…あ…」

早乙女君が僕の目の前に、立派な松茸を差し出した。



「見て、これ。
松茸だよね。」

「そうだよね。」

「あ、あそこにもある!」

「本当だ!」

僕達は、夢中になって松茸を採った。



「すごいね。人はいないし、綺麗な虞美人草は咲いてるし、松茸まで生えてるなんて…
こんな場所をみつけるなんて本当にラッキーだったね。」

「まさに、このあたりはラッキーゾーンだよね。」

僕達は、顔を見合わせて微笑んだ。



夕食には、今までに食べたことがない程の松茸を食べて、早乙女君と他愛ない話で盛り上がって、満天の星に見守られながら、幸せな気分で眠りに就いた。




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