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限界

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「急いじゃダメよ。
とにかく、安全第一なんだからね。」

「う、うん。わかってる!」

そう。
無理をせず、ゆっくりと…



「わっ!」



後ろから鳴らされたけたたましいクラクションに、僕と茉優は同時に声をあげた。



「気にしない、気にしない。
リラックスして行きましょ。」

「う、うん。」

僕は深く頷いた。
でも、本当はめちゃくちゃ緊張してる。
リラックスなんて出来るはずがない。
なんたって、初めてのドライブなんだから。



僕は乗り気じゃなかった。
なぜなら、僕はあまり運動神経が良くないから、どこか不安があったからだ。
でも、車があった方がいざという時に助かるからと言われ、僕は渋々教習所に通った。
試験には二度程落ちたから、ますます不安は募ったけれど、今回だめならもう諦めようと言っていた三度目の試験に受かり、僕はついに免許を取得した。



茉優はとても喜んでくれた。
それから、車を買い、僕もそれなりにテンションがあがって…そして、今日が新車での初ドライブというわけだ。
行き先は、茉優の希望で、水族館になった。
片道約一時間の道程だ。



「お疲れ様。無事に着けて良かったね。」

「そうだね。」

確かに疲れてはいたけれど、一時間の運転をクリア出来たことは、自信にも繋がった。



「わぁ、見て、瞬ちゃん。
カワウソ、可愛い~!」

はしゃぐ茉優を見ていると、なんだかこっちまで幸せな気分になってくる。
そういえば、水族館はかなり久しぶりだ。
結婚前には何度かデートで来たことはあったけど。



「わぁ!大きい!
マンボウって、思ったより大きいね。」

「そうだね、マンボウは…ヒック!」

突然のしゃっくりに、僕は思わず口を押さえた。
けれども、しゃっくりは全然止まらない。



「瞬ちゃん、手のひらに『人』って書いて、それを飲むふりしてごらんよ。」



いや、それはあがらないおまじないだ。
しゃっくりとは関係ない。
そう言いたいけど、しゃっくりが止まらないから、言えそうにない。
しゃっくりを止める方法なんてあったっけ?



(あ…)



そうだ!
息を止めるんだ!
僕は鼻をつまみ、口を手で押さえた。
1秒、2秒…10秒、20秒…
く、苦しい。
でも、まだしゃっくりは止まらない。
僕は必死になって、息を止めた。



「は、へやぁっ!」

限界まで来て、僕はおかしな声をあげてしまった。
そこらにいた人たちと水槽のマンボウが、びっくりしたような顔で僕を見ていた。
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