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大好物
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(う~ん、良いにおいだ。)
そう思った途端に、腹の虫がぐ~と鳴いた。
なんてタイミングだ。
今日は冬至。
今朝は特別寒くて、この冬最初のカイロを貼って出社した。
こんな寒い日だけど、今夜は楽しみがある。
僕はそれを楽しみに帰ってきた。
それは、いとこ煮。
結婚して初めての冬、僕はいとこ煮の存在を知った。
テーブルに並べられたそれを初めて見た時は、なんだか変わったものだと思ったけれど、食べてみたら思いの外美味しくて、それ以来、僕は冬至を楽しみにするようになった。
なんでも、妻の出身地の奈良の郷土料理らしく、冬至にいとこ煮を食べると、風邪をひかない、中風にならないと言われているらしい。
かぼちゃと茹であずきを煮ただけのものだが、その味が絶妙なんだ。
しかも、お腹の中からじんわりと温まる。
だからこそ、風邪を引かないと言われるのかもしれない。
そんなことを考えているうちに、妻が出来たてのいとこ煮を持って来た。
「え……」
僕の前を素通りする妻に、思わず、疑問と不満の声を漏らしてしまった。
妻は、ふふふと小さく笑う。
「まずは御先祖さんにお供えやろ?」
「えー……」
「いとこ煮、どんだけ好きなん。」
妻は笑いながら、夕飯の支度を始めた。
テーブルに料理が並んでいく。
そして、最後に仏壇にさっき供えたばかりのいとこ煮が並べられた。
「御先祖さん、まだ食べてる最中やて怒ってはるかも。」
「御先祖様、ごめんなさい!」
僕は大きな声で謝って、待ちわびたいとこ煮を頬張った。
そう思った途端に、腹の虫がぐ~と鳴いた。
なんてタイミングだ。
今日は冬至。
今朝は特別寒くて、この冬最初のカイロを貼って出社した。
こんな寒い日だけど、今夜は楽しみがある。
僕はそれを楽しみに帰ってきた。
それは、いとこ煮。
結婚して初めての冬、僕はいとこ煮の存在を知った。
テーブルに並べられたそれを初めて見た時は、なんだか変わったものだと思ったけれど、食べてみたら思いの外美味しくて、それ以来、僕は冬至を楽しみにするようになった。
なんでも、妻の出身地の奈良の郷土料理らしく、冬至にいとこ煮を食べると、風邪をひかない、中風にならないと言われているらしい。
かぼちゃと茹であずきを煮ただけのものだが、その味が絶妙なんだ。
しかも、お腹の中からじんわりと温まる。
だからこそ、風邪を引かないと言われるのかもしれない。
そんなことを考えているうちに、妻が出来たてのいとこ煮を持って来た。
「え……」
僕の前を素通りする妻に、思わず、疑問と不満の声を漏らしてしまった。
妻は、ふふふと小さく笑う。
「まずは御先祖さんにお供えやろ?」
「えー……」
「いとこ煮、どんだけ好きなん。」
妻は笑いながら、夕飯の支度を始めた。
テーブルに料理が並んでいく。
そして、最後に仏壇にさっき供えたばかりのいとこ煮が並べられた。
「御先祖さん、まだ食べてる最中やて怒ってはるかも。」
「御先祖様、ごめんなさい!」
僕は大きな声で謝って、待ちわびたいとこ煮を頬張った。
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