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私の王子様

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「聡君……素敵…!」

華麗な4回転ジャンプに、私は思わず立ち上がって拍手をした。



フィギュアスケートにハマったのは去年のことだった。
たまたま見た深夜のニュースで見た桐生聡君の笑顔は、癒し以外の何者でもなかった。



もうアイドルにときめく歳でもない。
これといった楽しみもないまま、ただただ働いて疲れて寝るだけの毎日だった。
そんな時に、桐生君の存在を知れたのは、大袈裟にいえば、神様からの贈り物のようなものにも思えた。
干上がりひび割れていた私の心を、こんなにも潤してくれたのだから。



聡君を知ってから、私の毎日は明らかに変わった。
DVDを買い、彼の滑る姿を毎日見た。
なんて美しいんだろう。
見る度に惚れ惚れして、見飽きることもなかった。



そして、ついに、私は今日、生の聡君を見ることが出来た。
目の前のリンクに本物の聡君がいる。
その現実が今でもまだどこか信じられない。


この日のために、滅多に行かない美容院に行き、服と靴を新調し、聡くんの大好きな、馬のピーさんのぬいぐるみも持って来た。



私なんて、数え切れない程いるファンのひとり。
おしゃれをしたところで、聡君は私の存在すらも知らない。
だけど、それでも、私はとても幸せだ。
聡君と同じ空間にいるというだけで、こんなにも幸せな気分になれる。
心が温かくなれる。



大歓声の中、私もみんなと同じように、聡君の名を呼んだ。
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