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シルバーラブ
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(困ったな……)
渋々スマホに変えたものの、やはり使いにくい。
急に画面が動かなくなり、どうしたものやらと公園のベンチで途方に暮れていた時…
「どうかされましたか?」
声をかけて来たのは、涼やかな瞳をした女性だった。
「あ、実はスマホの画面が…」
「あぁ、これなら…ちょっと失礼します。」
女性は私のスマホをのぞきこみ、簡単に直してしまった。
「どうもありがとうございます。まだ慣れなくて…」
「いえ。画面が固まった時は再起動してみるとたいていは直りますよ。」
「そうなんですか。助かりました。」
「今日はお仕事はお休みなんですか?」
「え?あぁ、私はもう退職したようなものですから。」
最近、社長の座を息子に譲り、会長という名の無職になったことを彼女に話した。
彼女は体調を崩し、休職中だと言う。
「一人で家にいても気分が塞がるばかりですから、この時間は良くこの公園に来るんです。」
「……そうなんですか。」
それから数日後、私はまたふらりと公園に出掛けた。
「あ!こんにちは!」
彼女がいた。
顔を合わせた時、胸が弾んだ。
心の奥底では、私はもしかしたら彼女との再会を期待していたのかもしれない。
それからは毎日のように会うようになった。
そのうち、昼食を食べに行ったり、近所で買い物をするようになった。
ただ、それだけのことなのに、若い頃のように胸がときめいた。
彼女は私の娘のような年だというのに、なんと馬鹿馬鹿しい。
そうは思うのだが、彼女への想いは募る一方だった。
「馬鹿なことを言うなよ!
付き合うのは勝手だけど、何も結婚まですることないだろ!」
「私は彼女とこの先の人生を歩みたいんだ。」
「はっきり言うけど、父さんは騙されてるんだよ。
考えてもみなよ、彼女は息子の僕よりも年下なんだよ!
彼女は父さんの財産目当てなだけなんだ!」
「私もこの年だ。
人を見る目くらいある。
彼女はそんな人ではない。」
息子と喧嘩したまま、私は強引に彼女と結婚した。
(まさか、こんなことになるとは……)
私には人を見る目等なかった。
息子の言う通りだったのだ。
そのことに気付いた時、私はすでに彼女に殺されていた。
親子程、年上の私には財産しかメリットはなかったのだ。
そんなことにも私は気付かなかった。
息子には、いや、他の誰しもがわかっていただろうに。
愚かな私自身に、苦い涙が込み上げた。
渋々スマホに変えたものの、やはり使いにくい。
急に画面が動かなくなり、どうしたものやらと公園のベンチで途方に暮れていた時…
「どうかされましたか?」
声をかけて来たのは、涼やかな瞳をした女性だった。
「あ、実はスマホの画面が…」
「あぁ、これなら…ちょっと失礼します。」
女性は私のスマホをのぞきこみ、簡単に直してしまった。
「どうもありがとうございます。まだ慣れなくて…」
「いえ。画面が固まった時は再起動してみるとたいていは直りますよ。」
「そうなんですか。助かりました。」
「今日はお仕事はお休みなんですか?」
「え?あぁ、私はもう退職したようなものですから。」
最近、社長の座を息子に譲り、会長という名の無職になったことを彼女に話した。
彼女は体調を崩し、休職中だと言う。
「一人で家にいても気分が塞がるばかりですから、この時間は良くこの公園に来るんです。」
「……そうなんですか。」
それから数日後、私はまたふらりと公園に出掛けた。
「あ!こんにちは!」
彼女がいた。
顔を合わせた時、胸が弾んだ。
心の奥底では、私はもしかしたら彼女との再会を期待していたのかもしれない。
それからは毎日のように会うようになった。
そのうち、昼食を食べに行ったり、近所で買い物をするようになった。
ただ、それだけのことなのに、若い頃のように胸がときめいた。
彼女は私の娘のような年だというのに、なんと馬鹿馬鹿しい。
そうは思うのだが、彼女への想いは募る一方だった。
「馬鹿なことを言うなよ!
付き合うのは勝手だけど、何も結婚まですることないだろ!」
「私は彼女とこの先の人生を歩みたいんだ。」
「はっきり言うけど、父さんは騙されてるんだよ。
考えてもみなよ、彼女は息子の僕よりも年下なんだよ!
彼女は父さんの財産目当てなだけなんだ!」
「私もこの年だ。
人を見る目くらいある。
彼女はそんな人ではない。」
息子と喧嘩したまま、私は強引に彼女と結婚した。
(まさか、こんなことになるとは……)
私には人を見る目等なかった。
息子の言う通りだったのだ。
そのことに気付いた時、私はすでに彼女に殺されていた。
親子程、年上の私には財産しかメリットはなかったのだ。
そんなことにも私は気付かなかった。
息子には、いや、他の誰しもがわかっていただろうに。
愚かな私自身に、苦い涙が込み上げた。
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