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塾講師の呟き

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電車の走行音というものは、どうしてこうも心地良いものなのだろう?
ガタンゴトンという音を聞いていると、自然と瞼が重くなる。
この町に鉄道が敷かれて何年になるのかわからないけれど、この心地良い微睡みは、昔も今も変わらないのではないだろうか?
いや、きっと都会ではこうはいかない。
乗客が多いから、座ることが出来るのはごく一部の者かもしれないし、座れてもすぐ前や隣にた人がいたら、こんなにのんびりとは出来ないだろう。



僕は、毎日、電車に一時間程揺られながら、勤務先である塾に向かう。
塾の傍に住めば良いのに、と、言われるけれど、僕は今の住まいが気に入ってるから、引っ越すつもりもない。
僕も妻ものんびり屋だから、田舎暮らしの方が性に合ってるんだ。
知り合いが塾を作り、そこに講師として来てくれないかと言われた時は迷いもあったけれど、僕は子供も好きだし、その頃働いていた会社にも、特にやり甲斐を感じていたわけでもなかったから、つい、応じてしまった。
だけど、その選択は失敗では無かったと思う。
会社勤めをしていた頃よりもストレスがないし、毎日がとても楽しい。



(さて、もうじきだな。)



降りる駅が近付いて来ると、車内にも乗客が増えて来る。
ざわざわした雰囲気に、眠気も去っていく。



僕は、隣に置いていたバッグを膝の上に乗せた。
今年の誕生日に妻がプレゼントしてくれたバッグだ。
なんでも、パラシュートの素材で作られているらしく、軽いのにとても丈夫だ。
塾の子供にも、カッコイイとほめられた。
僕はセンスが悪いけど、妻のおかげで、助けられている。
あまりにダサい格好をしていると、子供達にも馬鹿にされる。
子供達に好かれることも、塾講師には必要なことだから、妻にはとても感謝をしている。



ようやく、駅に着いた。
さぁ、今日も頑張ろう!
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