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鍋はいかが?

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「おい、なんで誰も来ないんだ?」

「だから~…こんなの絶対にだめだって言ったじゃないか。」

我が2年2組は、ちょっと変わった模擬店を開催した。
『闇鍋屋』だ。
ちなみに、これを提案したのは俺。
クラスメイトからの反対意見を無視して、無理やりに通したのも俺。
なぜなら、絶対にうまくいくという自信があったから。
なのに、俺の予想に反し、朝から誰も来ていない。
隣の繁盛ぶりとはえらい違いだ。



隣は、メイドカフェだ。
我が工業高校の数少ない女子たちがやっている。
女子というだけで、まさかこれほど繁盛するとは。
っていうか、なんで、うちの『闇鍋屋』は客が入らないんだ!?
こんなスリリングでワクワクする店はここしかないぞ!
みんな、本当に見る目がない。



「おい、加藤!ちょっと呼び込みに行ってこいよ。
ここにこんな面白い店があるって、みんな知らないんじゃないか?」

「やだね。さっきから、外の廊下をどれだけの人が通ってるか知らないのか?
みんな、ここの存在は知りながら、あえて来ないんだよ。」

「そんなことあるかよ。
こんな…」

加藤と話してる時に、隣の教室から女子の悲鳴が聞こえた。



「どうしたんだ?」

「行ってみよう!」

加藤と一緒に駆けつけると、男が、メイド姿の女子と揉み合っていた。



「た、助けて!」

女子が俺に向かって叫ぶ。



「コノヤロウ!」

俺は男の腕を取り、得意の背負い投げを決めた。
男はびっくりしたのか、青い顔をして呆然としていた。



「どうしたんだ?」

「そ、その人がLINE交換をしようって言って、私が断ったら、無理やりスマホを取ろうとして…」

「なんだと~!」

「す、すみませんでした!」

男は頭を下げると、一目散に駆け出して行った。



「あ、ありがとうございました。」

教室の中から自然に拍手がわきあがった。



「いや…とにかく無事でよかった。
あ、俺たち、隣で闇鍋屋やってるんで、良かったら来て下さい。じゃ。」

一応、宣伝をして、俺達は教室を後にした。



「やったな。きっと、今の騒ぎをきっかけにここにも客が来るぞ。」

「そうだと良いけど…」



しかし、俺の期待は見事に裏切られた。
結局、最後まで誰一人としてお客は来なかった。
使われることのなかった食材を抱え、俺は寂しく家路についた。
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