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夢の旅行
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「はぁ~、ようやく来れたな。」
「やれやれですよね。」
「でも、こんな近くじゃ全然お得じゃないな。」
「長年の夢が叶ったんですから、そんなこと、別に良いじゃないですか。」
確かに、ばあさんの言う通りかもしれない。
ついにわしらは夢を叶えたのだ。
昔から抱いていたフルムーン旅行に行くという夢を。
遥か昔、ちょうど子供たちが成人した頃、フルムーンパスのCMをテレビで見た。
仲の良さそうな夫婦が温泉に浸かるCMだ。
当時は、マイホームを買い、必死で働いていた時期でもあり、いかにもゆとりのあるCMの夫婦に強い憧れを感じた。
なんでも、グリーン車が乗り放題になるパスらしい。
お互いが88歳になったら、そのパスを使ってのんびりといろんなところを旅しよう。
それが、わしらの目標となった。
時は瞬く間に流れた。
そして、先日妻が88歳になり、わしらはフルムーンパスを買いに行った。
そして、その場でわしらは驚愕の事実を知った。
フルムーンパスは、お互いが88歳ではなく、夫婦合わせて88歳になったら行けたのだ。
とても大きなショックだった。
だが、ばあさんは言った。
「こんな勘違いをしたおかげで、長生き出来たのかもしれませんよ。」
ばあさんの笑顔を見ていたら、そうかもしれないという気になった。
フルムーン旅行を目標に、わしらは体に気を遣い、食べるものにも注意を払い、運動も積極的に頑張った。
そのおかげで、わしらは今でもふたりで暮らしているし、それなりに元気を保っている。
とはいえ、わしらはもう年だ。
もう無理は出来ない。
わしらは、近場の温泉に行くことにした。
5日間用のパスにしたが、3日で帰る予定だ。
だから、パスを使っても得はしない。
でも、ばあさんの言う通り、得かどうかなんてどうでも良いことだ。
二人共こんなに長生きが出来て、夢だった旅行に来れて…
結婚してから今までずっと仲良く暮らして来れて…
(本当にありがたいことだ……)
昔見たCMのように、ふたりでゆっくりと広い温泉に浸かり、わしは幸せを噛み締めた。
「やれやれですよね。」
「でも、こんな近くじゃ全然お得じゃないな。」
「長年の夢が叶ったんですから、そんなこと、別に良いじゃないですか。」
確かに、ばあさんの言う通りかもしれない。
ついにわしらは夢を叶えたのだ。
昔から抱いていたフルムーン旅行に行くという夢を。
遥か昔、ちょうど子供たちが成人した頃、フルムーンパスのCMをテレビで見た。
仲の良さそうな夫婦が温泉に浸かるCMだ。
当時は、マイホームを買い、必死で働いていた時期でもあり、いかにもゆとりのあるCMの夫婦に強い憧れを感じた。
なんでも、グリーン車が乗り放題になるパスらしい。
お互いが88歳になったら、そのパスを使ってのんびりといろんなところを旅しよう。
それが、わしらの目標となった。
時は瞬く間に流れた。
そして、先日妻が88歳になり、わしらはフルムーンパスを買いに行った。
そして、その場でわしらは驚愕の事実を知った。
フルムーンパスは、お互いが88歳ではなく、夫婦合わせて88歳になったら行けたのだ。
とても大きなショックだった。
だが、ばあさんは言った。
「こんな勘違いをしたおかげで、長生き出来たのかもしれませんよ。」
ばあさんの笑顔を見ていたら、そうかもしれないという気になった。
フルムーン旅行を目標に、わしらは体に気を遣い、食べるものにも注意を払い、運動も積極的に頑張った。
そのおかげで、わしらは今でもふたりで暮らしているし、それなりに元気を保っている。
とはいえ、わしらはもう年だ。
もう無理は出来ない。
わしらは、近場の温泉に行くことにした。
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だから、パスを使っても得はしない。
でも、ばあさんの言う通り、得かどうかなんてどうでも良いことだ。
二人共こんなに長生きが出来て、夢だった旅行に来れて…
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(本当にありがたいことだ……)
昔見たCMのように、ふたりでゆっくりと広い温泉に浸かり、わしは幸せを噛み締めた。
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