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希望の果実
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「絶対に出来るよ!
僕、頑張るから!」
旦那が事故に遭って入院したことで、娘は何かと忙しくなり、孫の翔がうちに預けられて早や一ヶ月。
戸惑いながらもなんとかうまくやってきた。
だが、今日はまた翔が困ったことを言い出した。
初めて食べたマスカットが余程気に入ったらしく、翔は、その種からマスカットを育て、両親に食べさせたいと言い出したんだ。
帰る時に、マスカットを買ってやると言ったのだが、どうしても自分で育てたいと言う。
その気持ちは悪いことではないが、マスカットなんて、素人に作れるはずがないと思うのだけど…
だけど、最初からそんなことを言うと翔ががっかりするだろうし…
*
「マスカットのこと、どうしたものかな?」
翔が眠りに就いてから、私は妻に相談した。
「誰か、果物に詳しい人でもいたら良いんだけど…
あ!おじいさん、パソコンで調べてみたらどうですか?」
「そうだな、それがあったな!」
老眼鏡をかけ、滅多に使わないパソコンを立ち上げて、検索した。
「ふむふむ。確かに難しそうだな。」
「でも、種から芽が出るのはわりと簡単そうですから、とりあえずやらせてみたらどうですか?
どうせ、途中で家に帰ることになるんだし。」
「それもそうだな。」
話はあっさりとまとまった。
次の日、翔と一緒に、庭の一角にマスカットの種を撒いた。
翔には可哀想だが、こんな手入れも何もしてない土では、多分、芽さえも出ないのではないかと思う。
その方が翔も諦めがついて良いだろう。
しかし、数日後、マスカットは見事に芽を出した。
やがて、その芽が成長し、葉が何枚も顔を出した。
翔と一緒に毎日世話をしているうちに、私はいつの間にかマスカットを育てることに夢中になっていた。
*
「じゃあ、後は頼んだよ。
僕もまた見に来るから。」
「あぁ、任せときなさい。」
翔の父親が退院し、翔は家に帰ってしまった。
毎日、パソコンを見ては、情報を仕入れ、私は残されたマスコットの世話に勤しんでいる。
必ず、実をならせるんだという希望と共に。
僕、頑張るから!」
旦那が事故に遭って入院したことで、娘は何かと忙しくなり、孫の翔がうちに預けられて早や一ヶ月。
戸惑いながらもなんとかうまくやってきた。
だが、今日はまた翔が困ったことを言い出した。
初めて食べたマスカットが余程気に入ったらしく、翔は、その種からマスカットを育て、両親に食べさせたいと言い出したんだ。
帰る時に、マスカットを買ってやると言ったのだが、どうしても自分で育てたいと言う。
その気持ちは悪いことではないが、マスカットなんて、素人に作れるはずがないと思うのだけど…
だけど、最初からそんなことを言うと翔ががっかりするだろうし…
*
「マスカットのこと、どうしたものかな?」
翔が眠りに就いてから、私は妻に相談した。
「誰か、果物に詳しい人でもいたら良いんだけど…
あ!おじいさん、パソコンで調べてみたらどうですか?」
「そうだな、それがあったな!」
老眼鏡をかけ、滅多に使わないパソコンを立ち上げて、検索した。
「ふむふむ。確かに難しそうだな。」
「でも、種から芽が出るのはわりと簡単そうですから、とりあえずやらせてみたらどうですか?
どうせ、途中で家に帰ることになるんだし。」
「それもそうだな。」
話はあっさりとまとまった。
次の日、翔と一緒に、庭の一角にマスカットの種を撒いた。
翔には可哀想だが、こんな手入れも何もしてない土では、多分、芽さえも出ないのではないかと思う。
その方が翔も諦めがついて良いだろう。
しかし、数日後、マスカットは見事に芽を出した。
やがて、その芽が成長し、葉が何枚も顔を出した。
翔と一緒に毎日世話をしているうちに、私はいつの間にかマスカットを育てることに夢中になっていた。
*
「じゃあ、後は頼んだよ。
僕もまた見に来るから。」
「あぁ、任せときなさい。」
翔の父親が退院し、翔は家に帰ってしまった。
毎日、パソコンを見ては、情報を仕入れ、私は残されたマスコットの世話に勤しんでいる。
必ず、実をならせるんだという希望と共に。
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