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奇跡

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(見えるかなぁ?)



私はそっと夜空を見上げた。
都会では星が見えないといわれてはいるけれど、それはきっと田舎と比べてのことだと思う。
現に今だって、星は見える。
夜になっても町が明るくても、空が汚れていても、まったく見えないわけではない。
だから、きっと今夜も見れるはずだ。
何十年かに一度と言われている流星群が…



わざわざ、この高台の公園までやってきたのは、その流星群を見るため。
いや…正直に言えば、願い事をするためだ。
流れ星なんて滅多に見られないけれど、今日ならきっと見られるはず。
しかもいくつも…
こんな年になって、星に願い事をするなんてちょっと恥ずかしい気もするけれど、だけどそんなこと言ってられない。
晩生で、自分に自信もない私には、このくらいのことしか出来ないんだから。



ベンチに座って、再び、夜空を見上げる。
私の頭に浮かぶのは、武田さんの笑顔…
いつも行ってた美容院が潰れたから、たまたま近所にオープンした美容院に行って、まさかの一目惚れ。
何度か行って、お話をするたびに、私はどんどん武田さんのことが好きになっていた。
武田さんは、私にはただ接客をしているだけなのに、馬鹿みたい。
そのくらいのことはわかってるのに、それでも好きな気持ちが止められない。



きっと、武田さんには素敵な彼女さんがいらっしゃるか、結婚されてるのかもしれない。
そうじゃなかったとしても、私が彼女さんになれるはずなんてない。
わかってるけど、心の底では奇跡を望んでる。
本当に馬鹿だな…
まるで、夢見る中学生みたいで恥ずかしい。



(気にしない、気にしない。
今夜だけは、甘い夢に酔いしれよう…)



気持ちを切り替え、暗い夜空に流星を探す。



(……あ!)



今、確かに見た!
驚きから覚めないうちに、またひとつの星が流れた。



(武田さんと仲良くなれますように!)



大慌てで、願い事を唱えた。



それからも面白いように星が流れ、私は何度も同じ願い事をした。



「あれ……荒木さん?」

「え?」

不意にかけられた声に振り向けば、そこには武田さんが立っていた。



「え…た、武田さん!?」



突然のことに、鼓動が早鐘を打ち出した。
一瞬、夢かと思ったけれど、それはまさしく現実で…



「もしかして、荒木さんも流星群を見に来られたんですか?」

「は、はい、そ、そうなんです。」

本当のことは言えないからそう答えた。



「僕もなんですよ。ここなら見えるんじゃないかって思って。」

そう言いながら、武田さんはベンチの隣に腰を下ろした。



まさか、もう流星群が願いを叶えてくれたっていうの!?



信じられない展開に戸惑いながらも、私たちは一緒に流星群を見上げた。
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